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[青木祐子] 恋のドレスと大いなる賭け ヴィクトリアン・ローズ・テーラー

名門オルソープ伯爵家から、令嬢であるアディルのドレスを作ってほしいという依頼が、「薔薇色」へと舞い込んだ。写真を見ただけでもその美しさは際立っていたが、実際に会ってみると、さらに美しさを感じた。彼女はどんな恋をするのだろうと思いながら、ドレスを仕立て始めたクリスだが、ある日、アディルの口から思いがけない言葉を聞いてしまった。結婚に最高の条件の人を振り向かせたいのだと。しかも、その相手が、シャーロック・ハニクールだと……

シャーロックへの思いを自覚し始めたクリスの元に、名門貴族の美しき令嬢アディルが、シャーロックを振り向かせるためのドレスを依頼してきて……というお話。

パメラにシャーロックのことを言われて「べ、別にシャーロックのことを考えていたわけじゃ……」みたいなやり取りを見せてくれるクリスがすっごいかわいい。
そんな具合に、好きという気持ちを自覚して、その気持ちを持っているだけで十分と思いながら、でも会いたいと思う気持ちが抑えられないことに戸惑うクリスが見れましたね。ドレスを作るときには、採寸と会話で相手の心を捉えていく手腕をもっているのに、自分の気持ちは捉えられない。それが恋なんだろうなあ。

はじめはアディルの恋を応援しようという気持ちが見えていたのに、相手がシャーロックと知ってからは冷静になれなくなる姿には、クリスには幸せになってほしいだけに、心が痛くなるものがありました。

一方のシャーロックは、社交界の場に出ても、アディルが目の前にしても、頭の中はクリスのことだらけで、こいつめこいつめとニヤニヤさせられてしまいましたが、クリスに対して思いを言葉にしないから、クリスからの信頼度が低いんだろうなあ。アディルの存在を知ったクリスが閉じこもったとき、怒る姿は、なんか駄々っ子っぽかったです。まあ、クールで売ってる男が、クールでいられなくなるぐらいクリスに振り回されてるんだなと思うと可愛いですけど。
怒ってクリスの元から離れたとき、もし後ろを振り返ってクリスの表情を見ていたら、絶対に帰れなかっただろうなあと、167ページのイラストを見て思いました。

二人とも相手を思う気持ちが強くなってきてるのに、目の前に立ちはだかる身分の壁の高さを十分理解してしまうから、一歩二歩下がってしまうんですよね。遊びじゃないからこそ、きついお話だと思いました。

そんなふたりとは裏腹に、いい感じになってきているのが、パメラとイアンでした。素朴ながら誠実な態度で、言葉をつむぐ姿は、パメラじゃなくとも、惚れてしまうんじゃないでしょうか。ちょっとぐらい抜けてても、側にいてホッとできる人って、いいですよね。生まれのことなんて気にしなければいいのにと思いたくなりますが、やはり気になるものですよね。イアンなら受け止めてくれると思いますが、さてさて。

アディルがシャーロックを気にするようになったのは、どちらかといったら手に入らないものに対する意地のような気がしますが、それでも気にかけ続けていれば、いずれは本気になるかもしれないし、「恋のドレス」を持ち出してきて、それに目を引かれたシャーロックを見てしまったら、頑張ってしまうかもしれない。っていうか、シャーロックを振り向かせるためだったら「闇のドレス」にも手を出すんじゃないかと不安にも思います。

シャーロックが見ているのは、アディルというよりは、クリスの作ったアディルのドレスだと思いますが、シャーロックとアディルの姿を見てしまったクリスからしたらそんなのわからないだろうから……。

ああ、切ない。まさか、これほど切ない展開が待ち受けてるなんて。なまじ、クリスがシャーロックと会うために、勇気を出したあとだけに、無残に散った約束が胸に痛くなります。

しかも、この状態で、あの人に出会ってしまったは、やばい気がする。恋のドレスと闇のドレスって、ある意味、ちょっとした違いで作ることができる気がするので、アディルに対して、クリスが今までのように接していけるのか気になるところ。

頼むからシャーロック。クリスを守ってあげてくれ。

恋のドレスと大いなる賭け (コバルト文庫―ヴィクトリアン・ローズ・テーラー (あ16-17)) - 青木 祐子

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