イギリスに来て半年。寄宿舎生活にも慣れてきたエリカは、十一月にガイ・フォークス・デイのお祭りがあるときき、何としても体験したいと思っていた。お祭りに参加するだけでは、外出許可がおりないが、協会のバザーに出品すれば、外出許可が貰えるかもしれないという。さっそくドロシーたちと相談を始めたエリカだが、協力を求めた男子寮の監督生のジェラルドはいい顔をせず、さらに男嫌いの新入生キャロルが、男子と大きな騒動を引き起こして……
ガイ・フォークス・デイに参加するために、また女子寮に入ってきた新入生たちをまとめるために、エリカが女子寮の監督生として奮闘するお話です。
いやあ、面白かった。既にジェラルドの気持ちを知ってる身からしたら、何かとエリカにちょっかいを出す姿は微笑ましく思うんですが、エリカからしたら単に嫌がらせにしか思えなくて反発されるし、反発されたらムキになっちゃうジェラルドなので、近づきたいのに近づけない不器用な様が、もどかしくも楽しい。何かとジェラルドをフォローしてたユージーンですら、面白がってましたが、僕としても同じ気持ちでしたね。
っていうか、イザベラですら気づいてるって言うのに、エリカ……あなたは鈍すぎだよ。まあ、そこがいいところだけど。
今回は、女子寮にも新入生が入ってきたんですが、これがまた鼻持ちならない輩ばかりで。貴族としてのプライドだけが高い三姉妹で、労働者階級の娘などと、イザベラのことをのたまった瞬間から嫌いになりました。ええ、イザベラ好きですがなにか?
ただ、一番下のキャロルだけは、その中でも素直で、臆病すぎるところもあったけれど、ちょっとずつエリカたちに心開いてくれるところが良かったですね。エリカになついていくところでは、まるで本当の姉妹のように微笑ましいものがありました。こういう雰囲気いいですよね。
ちなみに、宿舎ものならではといった雰囲気が素晴らしかったハロウィンの夜の占いシーンが、マイベスト。好きな人を意識してしまう打ち明け話的なやり取りに、頬が緩んで仕方ない。
そういえば、家族ものとしても魅せてくれるものがありましたね。おばあさまとは、親しみはあっても、若干距離を感じるところがあったんですが、怪我をしたおばあさまをお見舞いに行ったときの、決して一人じゃない、温かく迎えてくれる人がいると、感じさせてくれたシーンが、イラストとあいまって……。人に対して優しくありたいなと思わされました。
お祭りに参加できるかなんて話どころか、寮内をまとめることすらできず、今までのように、ただ真っ直ぐなだけではどうにもならないことを学びながらも、友人や仲間や、ちょっと気になる人たちの支えを受けて、背を伸ばしていこうとするエリカの姿が良かったです。
いやあ、楽しかった。どうやら、エリカもだいぶジェラルドを意識するようになってきたみたいだし、今後どうなっていくのか、とても楽しみですね。ぜひぜひ、続きをお願いしたいです。
花咲く丘の小さな貴婦人林檎と花火とカエルの紳士 (コバルト文庫 た 16-31)
谷 瑞恵
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