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[崎谷真琴] イクライナの鬼

「イクライナの鬼」と呼ばれる武将の再来とまで言われていたシル・ライサンが死んだ。だが、その魂が物質化して地上にとどまっているという。このままでは魂に負担がかかりすぎて消滅してしまうと判断した閻魔は、シルの未練をたつよう死神のトールに依頼した。
だが、地上に下りたトールが、シルの魂を見つけたとき、歴戦の勇者であるはずのシルが、十代の少年の姿となっていて……

死神を扱った作品っていくつもあるけど、これは命の重みが丁寧に描かれてる。一人一人ってのがしっかりと描かれてる。 主な登場人物のみんなを愛せるよ、これは。

という本うららの未衣名さんの感想に惹かれて購入した2007年度ロマン大賞佳作受賞作品。

いい話でしたね。未練を残した歴戦の戦士シルが、家族を思う姿のなんと温かいことか。遠くから眺めるだけだったはずなのに、ひょんなことから、娘や義理の妹を助けてしまい、あれよあれよという間に、距離が近づいてしまうところは、事情を知ってる身としては、ユーモラスなものを感じてしまいましたが、シルの心情を考えると嬉しさ反面辛いものも感じました。

それでも、娘ともう一度会えたことは良かったんだろうなあ。娘とのやり取りで一番印象に残ってるのは、手遊びですね。たわいもない遊びかもしれないけれど、人の繋がりを感じさせるところに、ちょっとグッとさせられたり。

死者であるシルと死神のトールは、生者の関与することは許されていないし、そのことをわかっていても、家族に危険が迫れば、動いてしまうのは当然のことで。かつて、肩を並べて戦ったセルシアとのやり取りのかっこよさや、シルに自分を重ねてしまうトールの心境の切なさなど、なかなか良かったですね。ただ、綺麗ではあるけれど、こじんまりとまとまってしまった感じがあるかなあ。もうちょっと何かほしいと思うのは、贅沢かしら。

と、ちょいと文句を言いながらも、最後に父として、娘に触れる姿には、やられちゃったんですけどね。魂が物質化してしまうほどの未練っていうのは、やっぱり、娘との約束だったんだろうなと思いました。
うん。地味だけど、こういう話って好きですね。

イクライナの鬼 (コバルト文庫 さ 12-1) - 崎谷 真琴

イクライナの鬼
崎谷真琴

集英社(文庫)
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