古文書に書かれている「魔法」を試したいと言い出した柊に、文鳥はいつものように付き合わされた。その「魔法」を試しながら眠りについたら、同じように「魔法」を試したという可愛らしい女の子、花梨が夢の中に現れた。それから毎晩のように、夢の中で花梨と出会うことになったが、花梨と自分の間にある大きな壁に気づいた文鳥は……
みりおんぐらむのt-snowさんの感想に惹かれて手に取ったんですが、これは大当たりでしたね。夢の中でしか会えない少女とのラブストーリィものですが、とても素敵な物語でした。
7歳の女の子らしい無邪気な花梨が微笑ましいばかりですね。「運命の人」とか「王子様」なんて言葉を使うところが、何気におませさん。小さな子の言葉とは思いながらも、照れてる文鳥でしたが、こういう好意を示されたら、妹ができたような気持ちになるのはよくわかりますね。
毎晩のように会ううちに、花梨がどんどんと成長しているのを感じて……というところは、さりげなく驚きましたが、むしろ、彼女との交流がより深まっていく感じがしましたね。子どもっぽさが少しずつ消えて、でも、やっぱり花梨ちゃんらしくて。いつの間にか、妹のような存在ではなくなり、彼女に惹かれていることに気づいてく展開に、胸がきゅんきゅん。同じ歳になったときのやり取りとか、たまらなかったですね。
という甘さにニヤニヤしてたんですが、遅まきながらここで時の流れに気づいて(ほんと遅すぎ)、いったいどうなるんだろうと不安に思っていたら……ああ……。ただ、好きという気持ちだけでは、いや、むしろ好きという気持ちが大きくなってしまったから、側にいないことが、余計に耐えられなくなってしまうんですよね。花梨の現実をみた何気ない一言に、傷つく文鳥がいましたが、わかっていても諦められないから恋なわけで。
好きでいながらも、決して出会うことが叶わない二人の様子に、切なさでいっぱいになりました。
ただ、切なさだけで終わらせないところが、このお話のいいところですね。花梨を失ったことで、自分を見失いかけていた文鳥に届けられた手紙に、ともに届けられた一枚の写真に込められた思いに、グッとさせられました。「橋」というのがまた良かったですね。ふたつの拠点を結ぶ象徴に、彼女の思いが伝わってきます。これを受け取って、それでもまだ悩んでいたら、男じゃないでしょう。前を向いた最後が、とても素敵でした。
いやあ、良かったです。こういった作品を読むと、人を好きになるって素晴らしいなと思わされますね。次作も大いに期待したくなりました。楽しみだなあ。
オススメな2007年度ロマン大賞受賞作。
眠れる島の王子様
夏埜 イズミ
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