祐巳が教室に帰ると蔦子さんが教室で写真の整理していた。とある事情から部室が使えないらしい。それを聞いた祐巳は、机は広いし、邪魔も入らない薔薇の館へどうぞと誘ってみたが、考えてみれば、蔦子さんと二人で薔薇の館にいるというシチュエーションは、初めてだった。いつもと違う雰囲気に、ちょっと不思議な気分になりながら、蔦子さんの整理する写真を眺めていた祐巳は……
蔦子さんの写真に登場する人たちのバラエティ豊かなショートストーリー集です。薔薇さまたちとは関係ない生徒たちの物語と、過去に出てきた人たちの物語が半々ってところですね。
呼びかけがキーとなる一つ目のお話「四月のデジャブ」が、とてもいい甘さの雰囲気で、浸っていたら次なる「三つ葉のクローバー」で切なくさせられました。そうだよなあ、姉妹という関係ができる以上、幸せな結末が待っているとは限らないんだよなあ。手に入らないものを追い求めて……という結末は、マリみてらしからぬような、らしいような、心の痛みを感じました。
甘い話から、切ない話、ちょっとクスリとさせられるところもあれば、不思議なものもあったりと楽しかったですが、個人的に一番好きなお話は「温室の妖精」ですね。古い温室の世話をしているのが誰かは誰も知らないということで、興味を持った女生徒が、温室に足を運んでいると鉢植えの薔薇から声をかけられた気がして……というお話。
温室には妖精が住んでいる。いやあ、素敵な表現です。ちょっと不思議な雰囲気でしたが、それでいて上級生から下級生へと受け継がれていく心を感じる物語でしたね。この話はもっと読みたかったなあ。
あとは、江利子関係の話が好きかな。江利子が令を妹にする過程の話も良かったですが、笙子のお姉さんが江利子への複雑な思いを綴る「枯れ木に芽吹き」には、何とも言えない気持ちにさせられました。ライバルのようで憧れの人。いつかきっと、ぎこちない思いをせずに、ふたりで並べるといいなと、そう思いました。
短いお話ばかりでしたが、それぞれワンシーンがとても印象に残る話が多かったですね。笙子の蔦子ラブっぷりが魅力たっぷりだっただけに、できれば蔦子×笙子話がもっとほしかったけど。あれほど気に入ってるのに、蔦子が笙子と最後の一線を越えないのが不思議でなりませんが、いつか、短編でもいいから、蔦子×笙子話をまとまった話にしてほしいなあ
マリア様がみてるフレームオブマインド
今野 緒雪
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