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[藤原美里] 桃仙娘々伝

薬師として近所に親しまれている中秋が、ある日、荷物を取りに離れへ向かったら、童女が倒れているのを発見した。何があったのかと心配になったが、特に外傷などもなく、目を覚ました桃華と名乗った女の子は、元気いっぱいだった。しかも、中秋を気に入ったらしく、しばらくここに泊まるという。
いくらなんでも、こんなお嬢さんを、と思ったが、行くところがないというので、薬師の弟子としてみたが……

yomimaruさんの感想を読んで手に取りました。薬師である中秋のところへ世間知らずな童女が弟子入りしてきて、というお話です。太陽が三つあったり、仙人が出てきたりする中華風ファンタジーですね。ほのぼのとした雰囲気がとても良いです。

いくら何だって、童女が行き倒れてたら、怪しいことこの上ないですが、疑う気がなくなるぐらい桃華が可愛いんですよね。杏やら桃まんなどを食べているときの幸せそうなことといったら、こっちまで嬉しくなってくるぐらいです。
まあ、桃華が何者かと言うのは、わりとすぐ想像がつきますが、尊大な口調とは裏腹に、子供っぽい好奇心と無邪気な行動が微笑ましいったらないです。邪魔をしているようにしか見えないところもあるんだけど、中秋がニコニコ見守る気持ちはわかりますよね。ああ、可愛い。

中秋には、日だまりのような温かさを感じますが、決して枯れてるわけではなく、恋する気持ちを持ってるところがいいですよね。近づいたと思ったら、そっと離れてしまった霞月に対して、踏み込んでいけないところは、気持ちがわかるなあ。
そんな中秋の態度に、嫉妬する桃華が微笑ましく思えますし、落ち込む中秋を励ます姿には、温かいものがありました。うん、いいですね。

このあたりで、霞月の正体に気づきましたが(遅い?)、いつか出会えるのかしら。

人界のお話だけじゃなく、天界や地界での出来事も絡んでくるんですが、太陽が三つ昇ってしまって気温が上昇し続けるといった大きなトラブルも、桃華にかかったら、かき氷と比べられてしまうんだから、力が抜けるというか、力を抜いて楽しめるというか、いいですよね。

いやあ、面白かった。何度も書いてるけど、桃華が可愛くて可愛くて、読んでて楽しい気持ちで満たされました。最後の桃まん作りのシーンなんて、ほんの数行なのに光景が目に浮かんできて、最高じゃないですか。
これはぜひ続きを読んでみたいですよね。まだ見ぬ冥帝の思惑とか、他にどんな仙人が出てくるのか楽しみです。
2006年ノベル大賞受賞作。

桃仙娘々伝 - 藤原 美里

桃仙娘々伝
藤原 美里

集英社(文庫)
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