カントリー・ハウスに住み込みで、ドレスを作ってほしい―モアティエ公爵からの注文にクリスはうなずいた。あの人はこの町にいないのだ。でも「薔薇色」にいたら、自分は彼を待ってしまうのがわかっていたから。
やがてカントリー・ハウスに到着したクリスたちは、モアティエ公爵の娘、アップルに会った。少女といっていい年齢の彼女は、ドレスに興味がないと言い出し、採寸すらさせてくれず……。
あまり町を離れた気がしないのは、部屋にこもりっきりだからかな。せっかく他の所にいったのだから、どうせならシャーロックとデートでも、ってそう簡単に行く二人なら苦労はないですね。
ちょっとしたことで落ち込んだり、ちょっとしたことで心が浮き立つ。まさに恋というほかないんですけど、お互いを意識しながらも、いや逆に意識してしまったからこそ二人の仲が進まない、心に想うだけで精一杯というもどかしさがたまらなくいいです。
今回なんと言っても良かったのは、シャーロックの姪っ子、フリルですね。舌足らずな話し方をするかわいさを持ちながら、伯爵令嬢としての知略を身につけているその素晴らしさに感動ものです。何よりその考え方、そして態度は淑女といっても過言ではないでしょう。そばにいたらシャーロックを、幾度となくニヤニヤと笑ってやったことでしょう。わずか九歳にして……恐るべし。
このシリーズはいつもイラストがとても素敵なんですが、今回もすごかった。採寸時のアップルには思わず気高さを感じましたし、珍しくドレスを着るクリスなんて可愛すぎてどうしようかと。いや、どうもしませんけど。
相変わらずアイリスが何をしたいのかわかりませんが(それにしてもいろんな神出鬼没だな)、闇のドレスについて、少しクリスが目を向けさせてないのかなと思ったり。ってことは、クリスの心を開くための準備期間なのかもしれない。
クリスも薄々ながら気づいていることがありますが、まあ、そっちはともかくとして、パメラにもちょっとした春があるみたいですし、今後「薔薇色」での恋の物語はまだまだ楽しいことが起こりそうですね。
カントリー・ハウスは恋のドレスで―ヴィクトリアン・ローズ・テーラー (コバルト文庫)
青木 祐子
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