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楽園の魔女たち 天使のふりこ / 樹川さとみ

「私は、私はっ、こどもがきらいだっ!」
あーちゃ!と、だめ押しのように姫君が笑った。
鼻をすすりながら、それでも虚勢を張って騎士はこたえた。
「私の名前はアシャだっ!!」

力はあるけれど性格に難のある魔術師エイザードと、彼のもとに集まった個性豊かな女の子四人のお弟子さんが繰り広げる修行と騒動を描くシリーズの第十七弾。今回は短編集です。詐欺師を相手取る「天使のふりこ」、自身を犬と信じる男の子の面倒を見る「しっぽの音楽会」、家出ごくちゃんの旅「ごくちゃんの小旅行」、若かりし頃の支部長さんが子どもを拾って面倒をみることになる「騎士と卵」が収録されています。

ああ、もうやばかった。表題作「天使のふりこ」の痛快さがたまらない!
詐欺に騙された男の子が助けを求めて叩いた扉が楽園で、その対応にサラが動いたら、詐欺師なんてひとたまりもないに決まってます。ええ、僕だったら、張り合いたいと思う気持ちすら持てないですよ。

獲物を待ち構えるうかのごとく罠を仕掛け、あとはひっかかるのを待つだけというワクワクと、見事引っかかってだまし取ったお金以上の金額を失い、最後に殿下の見事なお芝居によって、締めくくる。最高でした。やっぱり殿下とサラのコンビはいいなあ。

しっぽの音楽会」でも殿下のツンデレっぷりは存分に楽しめましたが、今回のお話しの中で、一番印象に残っているのは「騎士と卵」です。支部長さんことアシャ・ネビィが騎士団に入団したばかりのころ、子どもを拾って面倒を見ながら、とある事件を解決するというお話です。

若い頃から今と変わらずカチンコチンなまっすぐさを誇っていて、子どもの扱いになれずオロオロする姿が楽しく、それでいて真面目な彼には好感ばかり持ってしまいました。同僚やら婚約者の妹やらがからかう気持ちがよくわかるなあ。

はじめは苦手だったのに、だんだんと情がうつって、しっかりと世話してしまうあたりは、今に繋がるものもあると思います。あー、とか、むー、しか言えなかった子どもが、いつしか、あーちゃとか言えるようになってしまうんだから……じわっときちゃうじゃないか。

理想と現実の差はどうしたってあり、悩むこともあるけれど、決して引かずに追い求める支部長さんが、僕は大好きです。
さりげなくすれ違っていたエイザードとの因縁はここから始まってたのねというところにも、ニヤリとした。

楽園の魔女たち―天使のふりこ (コバルト文庫) - 樹川 さとみ

楽園の魔女たち―天使のふりこ (コバルト文庫)
樹川 さとみ

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