「でもこの世界には、もう創世の奇跡の力は残っていないんじゃなかったの?」
「奇跡なんて、今のこの世界にだっていくらでもあるよ。そうだろう?」
葉月さん、t-snowさんの感想を読んで手に取りました。
聡明であるが故に孤独な少女プルーデンスと、蒼い衣をまとった名無しの吟遊詩人が、鳥の塔に至る迷宮の謎に挑むファンタジーです。
いやあ、面白かった。これがデビュー作だなんてびっくりです。世界観といい雰囲気といいハマりまくりです。
風の雷鳥が羽を休めたと伝わる鳥の塔には、いまなお明かされていない技術があると思われて、その技術を狙って、各国から手が伸びていたら、たとえそれと知らなかったとしても、迷宮の謎を解く鍵を持っているプルーデンスが狙われるのは当然で。
盗賊が現れ、政治的駆け引きがあり、果ては拉致されたりと、幾度となく怖い思いをしながらも、鍵を託したおばあさまの思いと、塔に政治を持ち込んではならないとして、誰よりも先に謎を解いていこうとする少女の勇気に、拍手を送りたくなる。
なまじ知識を持つが故に、両親や兄から疎まれて、家族とともにいても孤独を感じていた少女なんですが、それをぐっと堪えて、誇り高さを忘れない姿勢は、すてきだったなあ。
こういう少女だったからこそ、吟遊詩人も興味を引かれたのだろうし、少女と共に謎解きに向かったんでしょうね。
はじめは怪しんでいた吟遊詩人との間に、いつしか信頼が芽生え、吟遊詩人の言葉に深い愛情を感じて。決して子ども扱いすることなく、対等に向き合ってのやりとりは、微笑ましくなるものがありました。
最後がまたとても切なくて。
自分のためには泣かなかった少女は、他人のために泣き、それを恥じることなく前を向いた姿がとても印象的でした。
この終わり方だと続けるのは難しいかもしれませんが、この二人のお話はまた読んでみたいので、なんとか続きを!と切望してみます。
鳥は星形の庭におりる (講談社X文庫―ホワイトハート)
西東 行
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