「阿良々木くんはどうするの?助けるの?助けないの?」
「助けるさ。けれどそれはあいつのためじゃねえ」
羽川からの質問に、僕は答える。
「まして正義のためなんかじゃありえねえ」
「じゃ、何のため?」
「何のためでもないさ。単なる、どうしようもないルールみたいなものだ。妹が困っていたら、兄として助けるのは、当然の話だからな」
暴れたがりの上の妹に、何にでも暴れる理由を見出してしまう下の妹。栂の木二中のファイアーシスターズと呼ばれる阿良々木火憐と阿良々木月火が登場する偽物語。上巻は、阿良々木火憐を怪異が襲う「かれんビー」です。
いやあ、笑った。笑いまくった。
中盤すぎるまで、ストーリィはほとんど動かず、阿良々木暦が、戦場ヶ原ひたぎ、八九寺真宵、千石撫子、神原駿河、羽川翼たちと何かの拍子に出会ってはお話をするといういつもの展開なんですが、ひたぎの重い愛のお話や、八九寺の勇気話、千石の必死な誘惑姿や、落ち込む神原とブレスレット話、暦やひたぎに意地悪する羽川などなど、最高に面白い。
この本を電車の中で読むという冒険を犯した自分を褒めるべきか責めるべきかわかりませんが、大いに楽しませてもらったので、白い目で見られても悔いはない(と思う)。
とまあ、掛け合いの面白さはいつもどおり満足として、偽物語。悪意のある「おまじない」を流行らせているヤツがいる、という推測を立てたファイアーシスターズが、原因を突き止めるべく動いたら……というわけで、暴れる正義の味方っぷりが、なかなか格好いいので、そりゃ頼りにする人たちもいるよなあ。暦とは大違いだ。でも、一度こうと思い込んだら、心を捻じ曲げないあたりは、やっぱり兄妹なんだなあ。
スポーツウーマンな上の妹・火憐と暦が喧嘩をしたら、どう考えても火憐の方が強いのに、最後には兄に寄りかかる姿をみて、なんとなくこのふたりの距離を感じた次第です。
それにしても、「犯人」がひたぎの過去にも関係してくるとはなあ。口先では割り切ってるといいながら、心の奥では葛藤があったと思うけど、それでも「犯人」と対峙したとき、自分を抑えることができたのは、暦という存在が支えになってくれていたからだと思います。ちょっとほろ苦いものもあったかもしれませんが、暦とひたぎが出会えて良かったと、心から思いました。
いやあ、面白かった。個人的には、羽川さんとひたぎが二人っきりになったら、どんな会話が繰り広げられるのかとかほんと見てみたいんですが、そのあたりは置いといて、下の妹話になるであろう下巻「つきひフェニックス」がとても楽しみです。
偽物語(上) (講談社BOX)
西尾 維新
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