世界各地で磁気嵐が頻発し、地球規模の磁気異常が発生していた。太陽黒点の活動が最大になるという1999年の9月に、世界は終わるだろうと多くの人が確信しているその9月に、探偵である南深騎の元へ独りの女性、瑠華が現れた。家に棲む幽霊のせいで、家の壁に人の顔が浮かんでくるようになったので何とかして欲しいとのこと。幽霊退治の依頼を受けた深騎と幼馴染の志乃美菜美は、彼女が住む『クロック城』へと向かったが……
世界の終わりが目の前にという荒廃した現代。「ゲシュタルトの欠片」を見ることが出来る深騎が、依頼を受けて『クロック城』を訪れたら、首無し死体が見つかって……というお話。
終末な世界や、幽霊退治の探偵、世界を救うために活動するテロリスト「SEEM」に、世界を救う鍵を保護しようとする「十一人委員会」など、初っ端の描写だけ見たら、どんなSFかと思ってましたが、クロック城が出てきてからは、一気に推理小説っぽくなりましたね。
過去、現代、未来という館があり、それぞれの外壁に、10分前の時間、現在の時間、10分後の時間という大時計があるってだけで、何が起こるのかとワクワクさせられるものがありますが、各塔へ移動するには、必ず「現在の館」のホールを通らねばならないといった具合の「条件」やら、事情を抱えた家族などの登場には、本格ミステリな雰囲気を予感させてくれて、入り込んでしまうばかりでした。
謎解きだけじゃなくて、登場人物たちの魅力的でしたね。探偵と幼なじみの関係には、歪みながらも思いが伝わってくるものがあったり、その他にも敬愛のみならず、思いを寄せる人の心情なども描かれていて、世界観の雰囲気と共に惹かれるものがありました。 ちなみに個人的に大好きなのは、SEEMのキキョウです。
「屍体を目の前にして、誰かとキスしたことありますか?」
どちらかというと敵対する関係にありながら、深騎に対してこういう台詞を投げかけてくるセンスに惚れました。
そして殺人事件が起きるわけですが、いったいどうやったのか、どうしてそんなことをしたのかと How と Why に興味津々でいたら、まさかまさか、クロック城という閉ざされた空間で、これほどの大トリックを見せられるとは思いませんでした。示唆された瞬間に、あっ、と声を上げそうになりましたよ。いやはや、驚くばかり。
幽霊とか結界とか、いろいろ不可思議要素が出てくるわりに、トリック部分には非常にフェアな物理トリックです。
しかもそこで終わらないから油断できない。一度解かれた謎から、別のものが見えてきたかと思いきや、さらにぐるりと回すところとか、凄かったですね。どうやって殺したかというHowの解答も痺れましたが、なぜ首を切る必要があったのかというWhyについての解答には、クラクラきちゃいましたよ。
いやあ、面白かった。個人的には、島田荘司や森博嗣作品が好きなら楽しめるんじゃないかなと思いました。いや、なんとなく読んでて、そんな連想があっただけですけど。
現在、「城」シリーズについては、四冊出ているとのこと。あと三冊を文庫化まで待つなんて、とても出来そうに無いので、サクッと買っておこう。どうやら、追いかけていく作家になりそうで、今から読むのが楽しみです。
第24回メフィスト賞受賞作。
「クロック城」殺人事件 (講談社文庫 き 53-1)
北山 猛邦
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