「トシちゃん、どこに行っても何になってもいいんだよー」
そう叫んだ。
「どこに行っても、何になっても、俺は絶対に追いつくから。追っかけてくから」
「嫌い」「近づかないほうがいい」 ― クラスの女子が噂するワタルと、ひょんなことから友達になったトシは、気づけばクラスメイトから無視されるようになり……。クラスの中心人物から一転、嫌がらせを受けることになったトシが、守ろうとしていたワタルに支えられながら、立ち直っていく表題作「ロードムービー」を含む三篇からなる短編集。どうやら「冷たい校舎の時は止まる」のスピンオフ作品のようですね。
この人の書く「悪意」は、じわじわと心に入り込んできて、きついものがあるんですよね。今までクラスでも頼られる存在であったトシが、たったひとりの女の子の意地悪から、徐々につま弾きにされていくところは、何とかならないものかと、心苦しくなるものがありました。優等生としてのプライドや、友人に対する思いから、我慢と悔しさを心に抱えながら、それでも決して折れなかったのは、ただひとり友人になりたいと思ったワタルという存在がいたからだと思います。
はじめは単に好奇心から一緒にいて、支えるつもりがいつの間にか大きな支えにもなっていて、気づけばお互い大切な存在になっていく。そんな様子が見て取れる展開がとてもよかった。悔しさから共に怒ってくれる、共に泣いてくれる友人がいてくれるっていいですよね。
児童会長になりたいというトシの目標を応援した気弱なワタルの演説には、涙が止まらなかった。
二編目の「道の先」は、進学塾の講師と、気に入らない先生は辞めさせてしまう女の子・千晶の交流を描いたお話です。
講師として接するとなると非常に扱いにくい子だと思いますが、そんな子に気に入られたのは、優等生だからこそ抱える悩みを、感じ取っていたからだと思います。自分に惹かれてくる少女を前に、冷静であり続けられたのは、自分に似た要素を感じていたからでしょう。決して距離をとらず、さりとてその手をとるわけでもない距離感が、とてももどかしく良いいものがありました。
千晶のプライドと不安を包み込む優しさと、語り手である主人公の切ない思いが見えるラストが素敵。
三編目の「雪の降る道」は、毎日お見舞いに来るみーちゃんが嫌でたまらない病弱なヒロくんのお話。これは「冷たい校舎の時は止まる」話を知らないと、伝わりが悪いかもしれない。少なくとも、読んだくせに記憶が忘却の彼方へいってた僕は、ヒロくんのぐずぐずっぷりがよくわからなくて、もどかしかった。他の二編は、元ネタわからなくても楽しめたんだけど。
ともあれ、みーちゃんの思いを考えずに、傷つける言葉を連発するヒロくんにムカつきながら、彼を見放さないで何とか元気付けようとするみーちゃんの行動に、切ない思いを抱きました。たぶん、元ネタを覚えていれば、もっと別の感情を抱くのかもしれないですね。「冷たい校舎の時は止まる」を再読したくなる短編集でした。
ロードムービー
辻村 深月

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