「私がここ、東城大に派遣された真の目的はね……」
高階講師はかちりと引き金を引いた。
「技術ばかり追い求めるあまり、医療の本道を見失った佐伯外科を正道に戻すため、です」
これは面白かった!「チーム・バチスタの栄光(→感想)」と同じく、桜宮の東城大学付属病院を舞台にしたお話ですが、時系列がやや過去になってます。
「チーム・バチスタの栄光」で語られる者たちの過去話が随所に見られるので、このシリーズを読んでる人なら、ページをめくるたびに、ニヤリとさせられるものがありますよね。田口や速水はまだ学生で、チラっとだけ登場しますが、後に彼らが進む道を決定づけたのも、この五日間の研修が一番大きな動機なんだろうなと思ったりもする。藤原さんの婦長時代の姿やこのころから変わってないんだなあという猫田さんとか好きだ。
とまあ、メインの話と関係ないところはそれまでとして、バブルの終焉が近い1988年。まだ田口もおらず、現代では病院長となっている高階が、帝華大学より赴任して、外科手術の新たな方法を突きつける中、昔ながらの医療に固執する者もいて……という二つの大きな勢力を見つめながら、新人の外科研修医として入局した世良が、外科医としての覚悟を身につけていくお話です。
両極端でありながら、どちらも腕を持っているが故に、どちらの人に対しても憧れみたいなものを持つ気持ちはわかります。まあ、手術では職人芸を誇るけど、生活態度がアレな渡海はどこまで見習おうと思ったかはわかりませんが、たったひとつのミスが人の命につながっていくという外科医としての現実を突きつけられて、震えるほどの怖さを味わいながら、立ち直っていったのは、両医師の支えが(わかりにくいかもしれないけれど)あったからだと思います。
ただ、その医師の思いが、さらに過去から繋がる出来事に振り回されていくのは、やるせないものがありました。王として君臨する佐伯教授の過去の手術に纏わる出来事と、ちょっとしたすれ違いから破綻が見えていくところには……。
それでも、やはり誰も彼もが医者なんだと思わせてくれる最後の手術は、深い感動を見せてくれました。
今後、このシリーズに触れたりすると、高科を違った目で見れそうです。うん、楽しみだ。
ブラックペアン1988
海堂 尊
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