地道なトレーニングが嫌いだった連が、いつの間にか、筋肉と持久力をつけていた。100mだけに集中すれば、仙波にも勝てるかもしれないのに、なぜ200mにも力を入れてるんだろう。
「少しはやらないと、新二に負ける」
あの連が、俺を視野に入れてる?
ライバルと競い合い、有力な新入生も入ったことで、南関東が、そしてその先であるインターハイが見えてきて……
というわけで、新二たちが最終学年ってからのお話ですが、すごい、素晴らしい。もう泣けて泣けてしかたなかったです。じわりじわりと来るのは、第一部でも第二部でもあったんだけど、第三部ではほんと号泣させられました。
どちらかといえば、今までは同じ部の人であっても、リレーの選手などの主要メンバーぐらいしか語れなかったんですが、最後の学年で、しかも新二が部長ってこともあって、多くの人に視点が向けられてましたね。跳ぶ奴、投げる奴、走る奴などなど、仲間を応援する気持ちの熱さが伝わってきます。
県にいける、関東にいける。結果がすべてではないけれど、目標としていたところに到達できた人たちの喜びは、何度読んでも嬉しくなります。特に谷口のシーンは、嬉しさとニヤニヤがとまりませんでしたね。
喜びもあれば悲しみもあって。
何といっても泣けてしまうのは、次の大会へあと一歩で届かなかった選手の悔しさです。今までの努力を知ってるからこそ、県へ、関東へ、インターハイへ、みなで行きたかったですよね。あと0.1秒が、あと0.1mが、あと一人を抜ければ、あとあとあと……。届かない悔しさに涙涙でした。
特にマイルのところは……、あー、思い出すだけでまた泣けてくる。
一人一人の競技も良かったですが、何といってもチームワークの4継(400mリレー)が良かったですよね。単純に四人の記録だけなら、次に進めるはずなのに、ひとりの緊張が、ひとつのバトンミスが、あっという間に、記録をつぶしていくんですから、リレーは怖いです。ひとつひとつ問題をクリアして、それぞれの思いがまとまって、初めて記録が出せる競技なんだとつくづく思いました。
最高のバトンパスで、掴んだ勝利には、ほんと感動モノでしたね。
いやあ、素晴らしかったです。恋話とか、人間関係のドロドロさには、ちょいと物足りないところもあったんですが、そこはメインじゃないですよね。
走りたい。この場で走れる幸せをかみ締めたい。仲間と共に。ライバルと共に。
そんな気持ちが、はじめから最後まで、伝わってくるお話でした。読んでると同じ気持ちになれること請け合いです。
単行本で三冊ということもあって、ちょっと手を出しにくいものがありましたが、軽快で読みやすい文章ですし、何より面白くて感動しまくりなので、激しくオススメです。ぜひぜひ、多くの人に手にとってほしい作品だと思いました。
第4回本屋大賞受賞作。
一瞬の風になれ 第三部 -ドン-
佐藤 多佳子
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