短距離は、十月末から三月末までの五ヶ月間、まったく試合がない。今まで毎月のように試合や記録会があったから、なにか気の抜ける感じがした新二だが、走りたいという気持ちはいつもどおりだった。基礎体力をアップさせたり、走技術を向上させるために、日々努力していたら、同期である谷口若菜から、相談したいことがあるとメールが来て……
一年生で迎えたオフシーズンから、二年生の新人戦が終わるぐらいまでの一年間を描いた第二部です。谷口からのメールにドキっとするあたりは、ああ、青春だなあと思いますね。相手の好きな人のことも知ってるだけに、諦めようとしつつ、でも目を離せないようなところには、昔を思い出してしまうような何かがありました。
ただ、ここで女性にかまけることなく、ひたすら練習に明け暮れるところが新二ですよね。県の短距離トップ4の面子を集めて、合コンしようと誘われたら、その面子なら一緒に走りたいと返すあたりが、たまらなく好きだなあ。
第二部の面白さは、何といってもリレーですね。まさか、連がここまで熱くなるとは思わなかったです。怪我をした連が思っていたのは、自分の気持ちよりも、仲間の気持ちだったんですよね。あのときの部長の言葉には、涙がとまりませんでした。ここだけじゃなくて、引退のシーンもよかったなあ。何度泣かせてくれるんだ、この人は。
バトンを繋ぐことの重さや「場所」へ込められる思いに、胸が熱くなります。
もうひとつ印象的だったのは、新二の成長ですね。今までは、県でも一段下というぐらいでしたが、だんだんとトップ3の背中が見えてきたら、応援したくなる気分でいっぱい。今まで、競争相手としては、それほど目を向けてくれなかった連が、興味を盛ってくれたときの新二の喜びようは、自分のことのように嬉しかったですね。努力し続けることができるという武器の強さを改めて知った気分。
精神的にも肉体的にも、いい具合に成長していたときに、起きたまさかの出来事は、今までの新二を知っていたら、その衝撃の大きさも理解できますよね。抜け殻のようになり、自分を責めるシーンには、心が痛くなるものがありました。
ずるずると堕落の道を転がり落ちそうになる中、再び走りたいという気持ちが見えたのが、仲間の走る姿であったというのは、とてもよくわかるなあ。みんなの走る姿を見て、勇気づけられ、元気づけられ、感情を揺さぶられるシーンには、こちらまで涙が流れてきました。第一部と同じシーンを、逆のパターンで見れたのは良かったですね。
きっかけをくれた彼女には、どれほど感謝しても、足りない気持ちでいっぱいでしょうね。
ああ、面白い。面白いことこの上ない。
今はまだ関東への切符を手に入れることも、難しいところがありますが、はたしてインターハイまでいけるんでしょうか。完結編となる第三部で、どんなドラマが待ち受けているのか、大いに楽しみです。
一瞬の風になれ 第二部
佐藤 多佳子
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