「本多くんって、サークル、どこか入ってる人?」
田畑希美の笑顔にふらふらついていったら、「速記研究会」に入ってしまっていた。アラビア文字のような殴り書きの字が、あっという間にノートを埋め尽くす様を見ていると、すごいと思うけれど、まるで役に立たないと思う。
にもかかわらず、僕が速記をやめなかったのは、彼女がいたからで……
どこかのサイトで感想を見かけて(どこだったろう?)、速記の話なんて珍しいなと、何となく記憶の片隅にあったんですが、ふと書店で見かけたので思わず手にとってしまいました。
好みの女性の勧誘に釣られて、速記研究会に入ってしまった本多くんの恋と速記の青春物語です。他の男子が告白して玉砕していく中、良くも悪くも、一定の距離にいられるため、告白もできず、離れることもできないという、臆病な男心がたまらなく面白い。
希美のことや速記のことなど、本多くんの内面が悶々と語られるところを読んでいると、なんて気弱なんだと(自分を棚に上げて)思ってしまうわけですが、そんな中、しっかりと本多くんを見てくれている希美がいいですね。こりゃ惚れるよ。うん。
それでも胸の内を打ち明けられない本多くんの姿に、思わず共感してしまう僕もダメかもしれない。
エピソードのひとつひとつが、とても楽しくて、共感して、笑い転げてたのは内緒。
甲子園を沸かせたという黒田くんが、二人の間に入ってからの話がまた良かったですね。三角関係といえば三角関係なんだけど、互いに仲良くなり、うまいぐあいにバランスが取れた三人の関係は、とても素敵でした。壊したくないという気持ちが良くわかります。自分があの中にいても、このままでいたいと思うでしょうね。
そのことがわかっていたからこそ、崩さねばならなかったとき、黒田はあんな手段を取ったんだろうなあ。あのクジは恐らく……いい男だよ。おまえさんは。
たぶん、このときにはすべてが決まっていたんでしょうね。そう思える寂しさがありました。
気がつけば、彼女と共に、学生生活速記に掛けていたという本多くんでしたが、悲願を達成した後の涙に何を思ったのかを想像すると、切ないものが溢れてきて、グッと堪えてしまいました。
ただ、この物語を、切ないという気持ちで終わらせずに、今が幸せであることをかみ締めさせてくれたのは、ホント良かったです。心が温まりました。
こういうバカになれたらいいなと思いますが、どうにもこうにもカッコつける心があってね……。
たぶん、今、学生の人よりも、もう少し年齢がいった人のほうが楽しめるんじゃないかな。たんに自分がその年齢だというだけかもしれないけど、なんとなく、学生生活を懐かしむような雰囲気があるので。
笑えて、ほろ苦くて、でも読後感は爽快。そんな青春物語でした。
オススメ!
SOKKI!-人生には役に立たない特技
秦 建日子
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秦建日子 / 文学・歴史・その他
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