霧島火山に大規模な噴火の危険が高まっているとして、火山噴火予知連会長の示した災害予測地図の範囲の広さは異常だった。宮崎県の火山の噴火で、大阪府や香川県まで覆われていたのだ。いつ噴火するかはわからない、ただしいずれ噴火することは間違いない、という言葉に、多くの自治体は静観を決め込んだ。
そして、六月十八日の午後四時十九分、霧島火山噴火は、大浪池水蒸気爆発で始まり……
リッパーさんにオススメされて手に取りました。宮崎県にある霧島火山帯で、破局的噴火が発生したら……というお話です。
これはすごい。これは怖い。災害という点では、地震の怖さはよくあげられるため、直接ではないにしろ知っていますが、噴火の怖さは、それを遥かに超えるものでした。
時速百キロを超える火砕流に襲われる恐怖、室内に入り込んでくる高温地獄などなど、背筋が凍りつくような恐怖が、熱とともにやってきます。火砕流は海をも超えて、灰は風に乗って日本を闇に包み……安全地帯なんてないに等しいんですから、恐ろしい。
その噴火の中を、火山学者……じゃないんだけど、そっち方面の人である黒木が、身をもって体験するところは、息苦しくなる思いでいっぱいになりましたね。避難している人との遭遇に、温かみを感じるところとか、ほんと涙ものなんですが、感動もあっという間に恐怖に変わっていくから辛いです。
ようやく、ようやく、火砕流の危機を逃れた人たちを待ち受けていたのは、「ラハール」なる水の脅威でした。
雨によって、火砕流が水によって流されてくる&水を吸った火山灰の重量で家がつぶれるといった土石流の恐ろしさは、熱とはまた違った恐怖があります。追われたら、上を目指すしかなく、でも水位は際限なく上がってくる描写のリアルさにやられまくり。
一方、災害を受けている当事者のみならず、災害に遭った日本という国の政治側の視点からも描かれていくところが、面白かったですね。ただでさえ、借金王国である日本が、生産能力を失ったら国が崩壊するとして、首相をトップとして設立されたK作戦を実行していく者たちの奇抜かつ的確な状況判断から、危機をひたすら切り抜けていく様が痛快でした。いや、本人たちは、胃を痛くするなんてもんじゃないんでしょうけど。
特に、日本の状況が知られていき、円の価値が限界まで落ち込んだときに、K作戦メンバーが賭けた「神の手作戦」のウルトラC技には、拍手!
ああ、すごかった。実際に、噴火が起きたら、まさにこうなるんじゃないかという、精密な情報とリアルな情景からなる圧倒的迫力を持った物語でした。地震で消滅した国家はないが、噴火で消滅した国家はあるとは、こういうことかと納得。
噴火によって引き起こされた災害を、古事記やヨハネの黙示録の描写に絡めるところとかモロ好みだったってのもありますが、絶望だけでなく、最後には日本という国の行く先に希望を見せてくれたおかげで、読後感はとても良かったです。いいものを読ませていただきました。
オススメな第26回メフィスト賞受賞作。
死都日本
石黒 耀
ちなみに、僕は単行本で読んだんですが、講談社ノベルズ版が出たらしいので、これから読もうかなと思われた方は、そちらの方が手にとりやすいかも。
死都日本
石黒 耀
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