「ね、この家、なにか感じる?」
あたしが聞くと、真砂子はちょっと真面目な顔でうなずいた。
「霊の姿は見えませんけど。でも、とても嫌な気配がしますわ」
綾子は音を立ててスーツ・ケースを閉じる。
「たしかに嫌な建物よね」
真砂子はポツリと言った。
「血の……」
え?
「血の臭いがする気がしますわ」
『憑きもの、幽霊、よろず相談申し受けます』な「渋谷サイキック・リサーチ」に舞い込んできた奇妙な出来事を、ナルシストな所長ナルちゃんこと渋谷一也とその助手であるリン、アルバイトの高校生・谷山麻衣の三人と、ぼーさん、巫女、エクソシスト、霊媒師が、文句を言いつつ協力し合って、事件を解決していくシリーズの第五弾。
今回は、迷い込んだものが幾人も姿を消しているという、迷路のように入り組んだ幽霊屋敷の調査に、いつものメンバーのみならず、ありとあらゆる霊能者たち二十名が挑むお話です。
いきなりナルのお師匠さんという女性が登場して、ほんとに?と疑いの目で見てたんですが、ナルが子ども扱いされちゃうんだから、こりゃ本ものだ。仕事がやり難そうなナルの様子ににんまりです。
そういえば、ナルっていったい何者なんだろうとかいうあたりを、シリーズの五巻まできて、今さらながら不思議に思い始める自分が不思議でなりませんが、そのあたりの話がチラッと見えてましたね。リンとナルの素性については、興味を惹かれるばかりですが、このあたりは最後に明かされるのかなあ。
麻衣の生い立ちについても、ようやく明かされましたけど、ひょっとしたら……とかいろいろ想像が尽きないです。
とまあ、本編以外のところで気になる話題が満載でしたが、本編もまた面白かった。増改築を繰り返したおかげで、住む人の利便性をまるで考えてない屋敷は、あちこちが不自然な構造をしていて、科学的に調査したら(させられたら)、どうしても寸法が一致しなくて。
いったいこの屋敷はどうなってるんだ?と、皆の頭に「?」が浮かびまくってたら、調査に来ていた霊能者たちが、ひとり、またひとりと姿を消していくんだから、たまりません。いつ自分に霊の手が伸びてくるか、早く謎を解かねば消えた人は……というサスペンス展開にドキドキしまくり。
ここでキーマンたる麻衣が夢を見るんですが、今回はいつもにもまして残酷でした。あれは夢とわかってなお、叫ばずにいられないものがありましたよね。もし夢じゃなかったら……と思うとゾッとする。手がかりを求めて真砂子が口寄せしようとしたとき、必死に止める麻衣の気持ちがわかります。
今回はこの真砂子と麻衣の間に、ちょっとした関係が築けたのが良かったですよね。最後、霊に囚われた真砂子を、大丈夫だからと必死に励ました麻衣の言葉に、じんわりくるものがありました。
いやあ、面白かった!まさか、浦戸という名前が、そんなキーワードになってるとは想像もしませんでしたが、怪異をこういう使い方でくるとは、いやはや恐れ入る。
それにしても、今回一番良い味を出してたのは、安原君ですよね。前作ではゲストだったのに、今回の事件の際にちょっとした仕掛けのために大抜擢されて、まるで動じないどころか、自分の役割を完璧にこなしてるところが、格好よすぎます。しかも、調査のサポート面でも大活躍してましたからねぇ。ある意味、綾子よりずっと役立ってると思ったのは内緒。
次も出てきてくれるのかわかりませんが、個人的には、ぜひとも登場してほしいです。はい。
悪霊になりたくない! (講談社X文庫―ティーンズハート)
小野 不由美
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