「俺は、やってない……」
大声で叫びたかったが、搾り出すような声しか出なかった。どんなに声を荒げて、また明瞭に発声したところで、誰も聞いちゃくれないことは、この数日間で嫌というほど思い知らされた。
剛士は、逮捕されたのだ。
醜い顔のためいじめられていた孤独な高校生・八木剛士と、彼に備わった不思議な力に興味を持った美少女・松浦純菜が繰り広げる恋物語の第八弾。シリーズを読めば読むほど、八木の鬱屈した思いに、胸焼けしていくんですが、今回もすごかった。「力」を自覚してから、八木はどんどんと最低になっていくなあ。
それはともかく、小田の視点から、今までの物語のあらすじみたいなものが語られるんですが、小田はこういう思いで、八木や純菜たちと一緒にいたのかと思うと、なんだかなあと思いつつ、ある意味、一番普通の女の子だったようにも思える。それでも内心では嫉妬がかけめぐり、友人すら罵倒するあたり、ぎりぎりだったのかもしれない。いや、でも、このぐらいの醜さは、内に収めているならば十分か。
八木とマリアのシーンを見てしまったとき、もしかして小田も……とか思ってドキドキでしたけど、ただでさえ、ぐちゃぐちゃな人間関係になってるので、そこまではいかなかったことにひとまず安心……してたら、八木が暴走しまくってやばかった。
罠にはめられた剛士が警察に捕まってというあたりは、自業自得なものが多分にあるんですが、そこで見えてきた真実には同情するところがあるけど、被害妄想から責任転換しまくっていくところは、どんだけ心が捻じ曲がってるんだと嫌気が差してくる。しかも、今まで自分が好意を寄せていた女性に対して、責任を負わせようとするんですからね。
まあ、良く解釈すれば、バンドのボーカル話を聞いて、可愛さあまってなんだろうけれど、だめだこいつ、としか思えないものがある。特に純菜方面を知っていると、やるせない。
あげく、別に恋人でもなんでもないのに、ヤらせてくれた人と両天秤をかけたあげく、勝手に期待して勝手に打ち砕かれて、やっぱり純菜がと言い出すあたりには、おまえはどこまで最低なんだと思いました。
このあたりのドロドロ連鎖は、いつもながらヒドイものでしたが、一番ひどいのがラストでした。まさか純菜をあんなにも愚かな行為で傷つけるなんて……。警察に捕まったとき、おまえはなんて言っていた?と問い詰めてやりたくなりましたが、そのせいで……というと語弊があるかもしれないけれど、八木にとって大切な人が傷つけられたのは、きっかけになったことは間違いない。
南部はいったいどこでそのことを知ったのか気になったけど、それより何より南部の「力」が消えたっぽいことに驚き。えっと、もしかして、そういうこと?あれ、でも同じことをした八木の「力」は消えてない……よね?
MCAがらみによるものなのかもしれませんが、このあたり大いに気になります。
それにしても、次で完結ってどうするんだろう。ハッピーエンドはとても遠い気がするんですが、せめて、せめて純菜だけでも救ってほしいなと思います。
地球人類最後の事件 (講談社ノベルス ウF- 17)
浦賀 和宏
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