地上約十五メートルの高さのあるポールの上で、死体が発見された。場所が著名なマジシャンの自宅であり、被害者がマジシャンのマネージャーだと言うことで、マスコミがこぞって取り上げる中、たまたま死体の引き上げ作業を見ていた真鍋の話を聞いた小川は、好奇心に惹かれて現場へと足を向けた。そこで、偶然にも西之園と出会い、事件の話をしたら、どうやら彼女もちょっとした関わりを持っているのだとか。
さらに、事件に関係する人物達の調査を依頼された鷹知から、協力を求められた二人は、事件を追い始めたが……
美術鑑定のみならず探偵活動までこなす椙田事務所の社員・小川とバイトの真鍋が、探偵業を営む鷹知と共に、殺人事件の調査を行なうお話……っていうか、鷹知が依頼されたのは、事件そのものの調査ではないんですが、似たようなものといっていいですよね。Xシリーズにしては、事件に対して一歩踏み込んでる様子が伺えます。おお、ミステリしてる。
小川と真鍋は、仕事というよりは、興味本位で事件に関わりあいを持つんですが、「なぜ犯人は、死体をポールの上まで運んだのか」という疑問をいろいろ考えていくあたりが面白い。
真鍋の発想は、突飛に感じることもあるんだけど、これはむしろ、ちょっとだけ先が見えちゃってるから、ついていけない人からすると、ん?と感じるんじゃないかと思いました。ま、そんな真鍋と小川が繰り広げる、ほんのちょっとだけ踏み外していく会話が、ユーモアがたっぷりでとても魅力的。
個人的に笑えたのは、萌絵の話になると、椙田事務所の全員が普通でいられなくなるところですね。異性を意識する真鍋がドギマギ緊張するのはわかりますが、同性の小川も緊張してるし、何より所長の椙田の慌てっぷりは、楽しくて楽しくて仕方ない。
椙田と一緒にいた女性が誰なのか気になりますが、それよりもいつまで椙田のことを隠しておけるのかが楽しみかな。反省会でどんな話が繰り広げられたのか、想像してニヤリとさせられます。
事件そのものはシンプルなものでしたが、調査を通じて、ちょっとした裏や登場人物たちの考え方などが見えるお話は面白かったですね。だんだんとヒロイン(?)たる小川の魅力も見えてきて嬉しく思う。自分に足りないところがあったら埋めるための努力をし、引きずられそうになったら、一度立ち止まって、自分を見つめることができる小川の想いは、今後どの辺りに向かっていくのか気になるところ。
それにしても、萌絵の出番ってそんなにないんだけど印象に残ることをしてくれますね。鷹知、小川、真鍋が集結して、ようやく解いていった謎について、アドバイスを送ってましたけど、おそらくその時点でほぼ見えてたんじゃないかしら。さすがに経験値が違うなあ。まあ、萌絵は別格な存在だからしかたないか。
その萌絵が一番魅力を見せてくれるのは、犀川とのやり取りのときだと思うので、その辺りが見たかったなあ。最後の電話のシーンは、萌絵の思いが伝わってきて、とても切なく思う。
タカイ×タカイ
森 博嗣
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