あれだけの騒ぎを引き起こしておきながら、剛士に下されたのは、二週間の停学だけだった。おそらく学校側としても、虐めを放置してたことをマスコミ等に知られることを恐れたのだろう。自分の「力」に自信を持った剛士は、今までの悩みがなんだったのか不思議に思うほど、晴れ晴れとした気分になっていた。
そんな剛士が、久しぶりに学校へと向かったら、誰も彼も剛士のことをいないかのごとく無視していて……
前作「世界でいちばん醜い子供」では、純菜の視点から物語が描かれていましたが、それとほぼ同じ時間を、八木の視点から描いたお話ってところでしょうか。苛められっ子の剛士が、自分の「力」に自身を持って、今まで苛めてた相手を片っ端からつぶしたおかげで、恐怖の的として恐れられることになったお話です。
虐めがなくなった分、今までの鬱屈したものは若干鳴りを潜めて、さらに大いなる自信を手に入れて、堂々たる態度を取る剛士ですが、それでも心の中じゃガンダムだったり、痛い虚栄心が渦巻いてましたね。そう簡単に人の心は変わらないか。それより何より、虐めから開放されたのに、孤独を感じていくところは、とても辛いものがあります。せめて純菜がいてくれればと思うものの、純菜がいなかったからこそ覚醒したんだし……、このあたりは難しいですね。
そんな剛士の隣へと入り込んできたのは、かつて剛士が助けた留学生エル・ビアンノで。可憐な容姿と、素直な視線に段々と惹かれていく……いや、これは孤独を紛らわせてるんだろうなあ。実際、純菜のことを考えて、いろいろ悩むんですから。純菜のこととはいえ、今までとは違った剛士の葛藤が見れました。
そうそう。間に挟まれるお話で、MCAエージェントの話が見えましたが、まさかこんな近くの人が絡んでくるとは思いませんでした。でも、何もできないのか?いや、そもそも味方なのかどうなのか……。例の「天使」についても、いまいち行動理由がつかめずううむ。
さらに意外なところで、南部と純菜のつながりが見えて、さらに「力」についてもチラリと語られてて。ひょっとしたら、これは大きなことなのかもしれない。
前作で純菜がショックを受けたのは、これを見たからかとか、純菜のあれをここで八木が見てしまうのかとか、ふたりのすれ違う様を見てると、もどかしくてもどかしくて。どちらの気持ちも知ってるだけに、お互いの内心を伝えたくなってしまいますね。
ようやく、ようやく、ようやく誤解が解けて、少なくとも話はできるようになって、でもやっぱり例のキスが響いて、とギクシャクしてるときに、まさか八木がこんな思いきったことするとは思わなかったです。南部と純菜がふたりで行動してたことを知ってやけになっていたとはいえ、相変わらずのマイナス思考スパイラルは健在でした。ああ……。
それでも、揺れ続けるところは、男ってやつは的なものがありましたが、何だこのラストは!?いや、むしろ、やっぱりといったところか。純菜とのことがあったとはいえ、微妙に恵まれてた八木を突き落としにきましたね。事態の大きさもさることながら、明らかに裏切りも絡んでるし、これはショックだろうなあ。
このまま剛士が動けなくなったら、次は純菜が動くのかと思うけど、剛士がヤッた件を純菜が知ったら、いったい彼女はどういう反応をするんだろう。ああ、もう悪い方向にしか想像力が働きません。次なるタイトルは「地球人類最後の事件」とのことですが、これじゃどうなるのかまるでわからないよ!でもクライマックスを予感させるものがありますね。
不安だらけではありますが、はやく続きが読みたくてしょうがないです。
堕ちた天使と金色の悪魔 (講談社ノベルス ウF- 16)
浦賀 和宏
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