首都圏のJRや私鉄で、三十代の女性が満員の車内で、ナイフのようなもので襲われる事件が相次いだ。いずれも軽傷であるものの、犯人はまだ捕まっていないということだったが、三回目の事件のときに、疑われた人がいたという。犯人扱いされた男は憤慨して、この事件についての調査を鷹知に依頼した。さすがに一人では、対処できないと考えた鷹知は、以前の事件で知り合った小川と真鍋に協力を申し出て……
満員電車での切り裂き事件を調査するお話です。あまり意識したことありませんでしたが、電車って、周囲に他人しかいないのに、まるで無防備ですよね。くしくも小川がいうとおり、「騒音のはいる自分の部屋」と思ってたかもしれない。普段電車を使って通勤している身としては、普通にありえるお話だけに、怖さを感じます。
事件については、捻りとかあまり感じられず、ストレートなお話なので、物足りないものがないわけではないですが、「如何にして犯人は乗客を切りつけることができたのか」とかを考察するところとか面白かったです。切ると簡単に言うけれど、被害者全員、背中の肩の辺りを切られてるので、周囲の視線を潜り抜ける必要があるんですよね。
小川がしごく一般的な思いつきを持ったら、真鍋が変則的なようで合理的なアイデアを持ってきたりして、なるほどと思わされたりしました。
まあ、そのあたりよりも、小川の心の動きのほうが面白いですけど。鷹知に惹かれつつ、ボスたる椙田にもふらふらとして、年下の真鍋には興味ない感じだけど、でも一番頼ってるし。この気の多さは、なかなか新鮮なものがありました。それぞれの人と繰り広げる会話がまた魅力的なんですよ。バカバカしい面白さや、ちょっとズレてる楽しさ、思わずドキっとさせられるものなど、ウィットに富んでて、ほんと素敵。
じわじわと不安を煽ってくれて、サスペンスな展開に急変するところは、ドキドキでしたが、うまいところを持っていったのが、彼女だというところに、にやりです。萌絵にはもっと出てきてほしいけど、それで小川の出番が少なくなっちゃったら、困るしなあ。難しいですね。
そういえば、動機とかが普通だったのは、森博嗣作品の中では珍しいですよね。
読みはじめたときは、茅田砂子作品で言う「クラッシュブレイズ」みたいな位置づけ(S&MやGシリーズなど、他シリーズの主要キャラ総出演物語)なのかと思ってたけど、一般の人というか、より広い範囲の人たちに向けたシリーズなのかもしれない。
いや、ひょっとしたら、裏でいろいろあるのかもしれないけど……といろいろ考えさせられてる時点で、作者の罠にかかってるかもしれない。
キラレ×キラレ (講談社ノベルス (モF-39))
森 博嗣
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