キミのためだ ―― 不倫相手の上司に転勤させられる羽目になった亜季は、高校から続く親友相手に愚痴をこぼしていた。夫のDVに耐えかねていた素子の話も聞いていた有香は、お互いの相手を狙って交換殺人してしまえばと言い出して、素子が話にのり、アリバイから何やらを考えていた。冗談にしては不謹慎だとわかっていたが、痛快でもあったが、そんなある日、亜季の不倫相手が、事故とも殺人ともつかぬ状態で発見されて……
流血女神伝シリーズの須賀しのぶさんの単行本ってことで手にとって見ました。
不倫した上司から切られた亜季と、夫のDVに耐える素子と、狙い通りセレブな生活を送りながら閉塞感を抱える有香という、高校時代からの親友三人が、三十を迎えたときに起きた事件をめぐるお話ですが、これはなんとも言えない気持ちになりますね。読み進めるにつれて、お腹の中に、澱のようなものがたまっていく感じがします。
不倫相手が亡くなったことで、疲れきった心と体に区切りがついたことよりも、恐怖もみえてくる展開にドキドキです。まさか親友が、という思いもそうですが、もしそうなれば、自分も手を汚さなければならないんですから。
再び不倫に陥っていく亜季の心境には、元上司との複雑な思いも見えてくるんですが、それより何より、目的のために親友にわなを仕掛ける心境と、相手の男を愛するが故に手を下そうとする心理描写に、いろいろ歪みが見えて恐ろしくも興味深い。
ここまでは、どちらかといえばサスペンスな印象を受けていたんですが、素子の夫が亡くなってからは、むしろ友情ものな印象が強くなっていったかな。高校を卒業してから、長い年月を経て、亜季と素子がお互いの心を受け止めていくところは、とても温かいものを感じました。
でも、実は歪んでたんですよね。
時折見える高校時代のエピソードがとても素敵で、いつまでもこのままで、という気持ちが美しく光っていたので、気づかなかったんですが、有香が間に入ってくることで、ゾクリと感じるものがあります。
親友二人が足を踏み入れたなら、有香も……と思っていたんですが、ここで有香が決断したことは、あまりにも悲しく、あまりにも切なく、あまりにも心苦しいものでした。
でも、そのきっかけがあったからこそ、歪みを戻せる道があることに気づけたんだろうと、そう思いました。
辛さを噛み締めたくなるラストに、思わずこみ上げるものがある。
スイート・ダイアリーズ
須賀 しのぶ
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