「こうやって旅に出ると、必ず自分なりの発見があるからね。……発見っていっても大抵は些細なことでしかないし、他の人にとっては当たり前のように知っているようなことでしかないのかもしれない。でも、それを自分の目で見つけるってところに、喜びがあるんだよ。他の誰でもない、自分自身の目でね」
幼いころから親と考えたことのない父が、大宮にマンションを残して亡くなった。さんざん迷惑をかけたんだからと受け取ったら、なんと先に入居者が?しかも鉄郎と同じように父親からの正式な書面を持っている。事情を知っているらしい父の友人に電話が繋がらず、ならばと、父の友人がいる北海道へと向かうことにしたが、アイツもついてきて、しかも口やかましい鉄道オタクで……鉄オタ男とのコミカルでちょっぴり感動風味な旅路を描くお話です。
序盤きつかったのは、先に入居してたアイツこと照彦が僕の嫌いなタイプのオタクだったからです。人の話を聞かず、すべてを自分の趣味である鉄道に絡めて考えて(のぞみちゃんという幼馴染が出てきたら、新幹線の話になる、みたいな)、電車に乗れば薀蓄三昧&周囲の迷惑も考えず列車アナウンスの真似など、一緒に旅したら、うざいことこのうえない。語り手たる鉄郎の気持ちがとてもよくわかるんですが、それがだんだんとうざさが消えて、むしろ魅力になっていくのは、やはり旅のせいでしょうか。知らない土地を訪れたときの鉄オタが、とても力強い存在であるということを知らされたのもあるかもしれません(なんと身勝手な!)。
北海道を訪れたもののまるっきり成果がなく、しかたなしに戻ろうとしたら、雪で飛行機が止まり。明日までに戻らないといけないのに……というトラブル時に、照彦が生き生きして、そんな彼を見るうちに、だんだんと壁がなくなっていくという展開が良かったです。隣の席に座っていたことで道連れとなった滝川さんという女性の事情も、ふたりの距離を縮める手伝いになってたよなあ。
時に、ただ電車が乗りたいがために遠回りされることもあるんだけど、そこで新しい出会いがあったりして、ああこれが旅かと思う次第です。うざいおっさんに対して、次第に愛嬌を感じて、ちょっぴり恋かなと思う出来事があったり、家族ものな雰囲気もあったりして、よかったです。
ただ、のぞみちゃんやお母さんの話など、前振りがあったのに登場すらしなかった人たちの扱いがちょっとね。まるで忘れ去られた感じで、ちょいともったいなく思った。
って、続編でるのかなこれ。オチをみるとありそうだけどさてさて。
鉄バカ日記 (メディアワークス文庫)
安彦 薫
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