陳腐ないいぐさではあるが、現実を目の前にして、それでも、と諦めない者だけが、この先に進んでいける。
この先に進んでいけるものだけが、本当の早さを手に入れられる、はず—
生まれてくる全ての子どもが、先天的に欠陥を持つ現代。サプリによって感情を制御することが当たり前な子どもたちは、やがてサプリを組み合わせることで、自分自身を乗り物のように知覚させるサプリを手にして、それを用いてレースを行うようになった。非合法な「ヴィークルレース」に、羽鳥カナミとその仲間たちが挑む青春疾走物語。
これは熱い。欠陥を持つ子供たちやサプリの話、そしてヴィークルの状態など、説明が若干多いせいか、レースもののわりにスピード感はそれほど感じられなかったんですが(ドライブ感という意味では、恋愛ものだった著者の前作「紫色のクオリア」のほうが上だと思う)、レースに挑む者としての熱い思いを感じました。
カナミが所属するチーム「アンパサンド」は、他のチームに比べても圧倒的少数で、だからこそ戦略を重視し、初登場からレースまでのインパクト模様にすげーと思い、レースの最中の無謀な行動には疑問を抱いたけれど、そこに至る思いを、新世代アーティストである美少女出雲ミクニによって引き出されていくところとか良かった。
仲間たちも個性的で、何やら付き合ってるんだか何だかよくわからない人間関係と、憧れや嫉妬といった思いを抱きながら、先を見据えて動くのは、ライバルとも言うべき人たちがいるからですよね。命を賭けたレースに参加して、そこで見せた奇跡的なパフォーマンスは、格好よく喜劇で……しまらない気がしないでもないけれど、これがカナミの第一歩なんだなとニヤリ。
ヴィークルエンド (電撃文庫)
うえお 久光
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