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ハイドラの告白 / 柴村仁

「この町には、知人に会いに来た、と言ったでしょう。具体的に言うと、実のところ俺は、布施正道に会いに来たんですよ」
一瞬、彼が何を言っているのか分からなかった。
顔を上げて俺を見る由良の瞳が、どこかからのわずかな灯りを反射して、暗がりにうずくまる肉食動物のそれのように鈍く光った。
「あんたもそうなんでしょう?」

気鋭の現代アーティストとして名を売り出した布施正道。彼を追って訪れた町で、春川は、同じ美大に通う由良と出会った。たわいもない話をしている間に、彼もまた布施正道を目的としていて、しかも春川しか知らない秘密をなぜか由良も知っていて……サスペンスと恋の物語。

これは面白い……んだけど、なんだか不完全燃焼な感じがするのは、僕だけかしら。

お互い布施正道という目的を持ちながら、事情を隠して協力しあう二人の男たちのやり取りは、何ともドキドキさせられる。丁寧な物腰だけどうさんくさい由良と、隠し事をしきれず、たじたじになる春川とのユーモアを見せつつ、緊張感ある関係がとても良い。

時折現れては、春川にかみつく少女ねうも、おしゃまで可愛らしくて良い子だなとなごみましたが、布施正道の話が前面に出てきてからは、由良ばかり目立ちました。なんという狡猾さとニヤリ。ただ、春川が重く感じている出来事には、正直それほどのもなのかなあ?と思ってしまったので、重苦しさが思ったほど伝わってこなかったのが物足りなかったです。由良の勘が良すぎるところも、ちょいと、ね。

でも、最後まできっちり正体不明を貫き通した由良の態度に完敗。

後半に入ってからは、前半の由良に関係する女性のお話になるんですが、続き物というより別短篇って感じで、ちょっと拍子抜け。

でも、お話としてはこちらのほうが面白かった。愛する人のために自分を磨き、それでも振り向いてくれない彼を振り向かせたい。そんな女心の愛らしさと恐ろしさが伝わってきます。

好きになってもらえない残酷さはわかりますが、そこでふと魔が差したかのように、独占欲が発動すると……ヤンでいるようで、一本通ってるから、人の心は恐ろしいと思う次第です。

時に行き過ぎることもあるけれど、好きな人の一言で、浮き沈みする。恋ってすごいよねと思いました。

ハイドラの告白 (メディアワークス文庫) - 柴村 仁

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「俺は、平気なフリなんかしていない」 ハイドラの告白 柴村仁 from 謎の男の小説感想部屋 2010-05-08 (土) 22:26
切ない想いの残り火に魂を焦がす、不器用な恋物語。心に傷を残す物語「プシュケの涙」の続編、「ハイドラの告白」の感想です。 1作目「プ†††.

Comment:1

由良 2010-07-30 (金) 17:10

私はまだ別短編的な話の途中までしか進んでないんですが、どう・・・なるんでしょうね。
由良。女というのは怖いよ。てか、私も女だが。はは
「ハイドラの告白」の主人公は、私的に好きなキャラですね。面白いです。

さて、読もう。どうなるかな♪なるかな♪

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