「あたしが側にいると、ろくでもない目に遭うわよ」
「ろくでもないことは世間からもたくさん頂けるが、君からしか与えられないものが山ほどある。天秤にかけたら、答えは決まっているな」
「……あんた、全然迷わないのね」
「迷えるほど、この社会はロリコンに選択肢を与えない構造でね」
「人生の迷子に気づかない人って怖いわ!」
事件を引き寄せる体質を持つ美少女トウキによって、犬猫捜索専門の探偵・花咲太郎が、事件に巻き込まれる物語の第二弾です。
探偵ものなはずなのに、殺し屋とのコンビものな気がしてきた。五つの物語のうち、二回も出てきて、これがまたぐだぐだで、学生かと思うようなノリなのに、面白いから困る。特に「エニグマ作戦」なんて……何がしたかったんだろ。太郎に会いたかっただけじゃんと思ったのは僕だけじゃないはず。
でも、そんな殺し屋さんにも思うところがあるんだなと感じられたのが、「水槽の向こう側」。太郎がトウキと水族館へ行ったら、武装集団が立てこもって、人質にされてしまうというお話。殺し屋さんがここにきて人質になって、ふたりで緊張感ないやり取りをしてるわけですが、そもそもなぜここに彼が居たのか、そして終わった後に流した涙はなんだったのかを思うと、胸にくるものがあります。
次に現れたら、また飄々としてるんだろうけれど、彼にもいろいろあることが伺えて、ちょっと切ない。
この他、猫の死体探しを依頼してきた老人に翻弄される「双子ペット事件」や電車で隣に乗り合わせた人から殺害予告される「この電車の行先で」とあったけれど、一番良かったのは、トウキとの出会いを描いた表題作「花咲太郎は覆さない」ですね。
トウキと出会ったときの発言は、正直引きますが、半分本気であり、半分はおどけてたんだと思います(と思いたい)。家出少女であることはわかりますからね。呆れた様子を見せながら、トウキが離れなかったのは、彼を信頼してもいいと思ったからでしょう。
その体質から人を遠ざけたがっていた彼女が、まるで家族のような無条件の信頼を得たのは、どれほど安らいだか想像に難くないです。
太郎の家に落ち着いた彼女が、たった二行の、でも温かい気持ちにさせてくれるメールを送ってくれたことが嬉しく思いました。
探偵・花咲太郎は覆さない (メディアワークス文庫)
入間 人間
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