「三郎さんが線路を見てくれるから、安心して旅行できるんだよ」
そのときは気にも留めていなかったが、今櫻子に妻の話をして、初めて、その言葉が自分の支えになっていることに気がついた。
「歩いていけないような遠い街だって、線路がつないでくれているから」
線路を守る保線手である所田三郎が線路に異常がないか確かめていたとき、ひとりの女性を発見した。機関車から落ちた女性・東雲櫻子は、大きな怪我こそなかったものの、目が覚めたら、家に帰りたくないと言い出して……昭和初期を舞台に、線路一筋の四十男と世間知らずの二十女が繰り広げるほのかな恋の物語です。
特別大きな起伏のある物語ではなく、物足りなさを感じるんですが、年の差ラブはいいですね。いわゆるラブストーリー的なハッピーエンドではないんですけれど、それぞれの多立場や思いを考えると、いい終わり方だったと思います。
世間知らずのお嬢様は、気位ばかりが高く、お金を儲けることに対して嫌悪があったんですが、働く人を間近で見ることで、仕事に関する意識が少しずつ変わっていき、同時に怖さを覚えていた男の人に対しても、適切な距離を取れるようになっていく成長模様がよかった。
一方の三郎も、櫻子に少なからず思いをいだいていましたが、これは亡くなった妻への思いからきてるところもあって、このあたりの重なり具合は、ほんのりと伝えられるから美しく感じたのかな。飯場で働くトメさんが、二人の間を繋いだからこそでもありましたが。なにげにこの人が一番活躍と言うか、暗躍してたよなあ。ちょっと能力高すぎるきらいもあったけど。
たった三日間の出来事だけど、人の思いと成長を感じられるお話でした。最後まで不器用だった三郎さんにニヤリとしつつ、いつかまた再会できたらいいなとそう思います。
君に続く線路 (メディアワークス文庫)
峰月 皓
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