「あなた方は私たちの村で奇跡を起こして私たちを救ってくれました。そのあなた方が」
エルサは言葉を飲み込み、それは同時に涙を飲み込んだようにも見えた。
「そのあなた方が奇跡で救われないのだとしたら、どうして私は神の教えを人に説けるのですか?」
麦に宿り豊作を司る賢狼の少女・ホロと商人ロレンスの旅路を描く物語の第十四弾。今回は、ヨイツまでの地図を手にいれることができ、共に向かうことができると喜んでいたロレンツの前に、禁書騒動が持ちかけられて、というお話。
あー、もう、たまらん。ニヤニヤが止まらない。
読んでる身としては、ふたりがどんな関係かってのはわかりきっていることなんですけど、それを第三者から指摘された時のロレンスといったら……!どんな顔をしたのか想像するだけで、やばいです。同じことをホロが言われたら、内心どうなるんだろうとか想像して更にニヤリ。
ともあれ、ヨイツまでの道が見えてきたところで、テレオ村のエルサと出会い、彼女が旅の共としてついてきた書籍商ル・ロワに、ある禁書を手に入れたいという話を持ちかけられるんですが、ここでの決断は、非常にやりきれなかったなあ。
でも禁書は場合によっては北の地に影響を及ぼす可能性があり、手に入れる手伝いを下ほうが良い。でも、手にいれるために街を離れたら、ホロと一緒にヨイツへ行くことができない。
合理的なものを考えたら、そりゃ禁書を選ぶ方が良いというのはわかるけど、これまでいろいろあったホロとの旅の終点がこの街になってしまうことは、やっぱ突然すぎるし寂しい。それを感傷とか言ってくれちゃうから、まったく立つ瀬がないですが、資金の交渉や旅の準備をしながら、ふと訪れる寂しさが、胸にきました。大切な人が傍にいることの温かさって、得難いものだと思わせてくれますし、あり得ない未来の妄想をしてしまうのも……ね。
そんな我慢をエルサに気づかれて、そして彼女が何かできることはないかと言い出した心情は、素晴らしいものがあったなあ。そうだよ、これまで他人のために奇跡を起こしてきた二人が、自分たちに奇跡を起こせなくてどうするよ!
無茶ぶりを受け止めて切り抜けたロレンスが見せた素の感情に、ホロの「たわけ」がいろいろな意味を見せてくれて、うふふとなりました。
さて、これでようやくヨイツへの旅が見えてきましたね。また二人の旅になると思うと、いろいろ考えてしまいますが(特に最後の方の二人のやり取りを見ちゃうとね!)、ま、旅の間は、今までと変わらないかな。最後には笑顔でいられるといいなと思いながら、あとがき読むと……え?
狼と香辛料〈14〉 (電撃文庫)
支倉 凍砂
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