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ヴァンダル画廊街の奇跡 / 美奈川護

「ひとつ、おまじないを教えてあげる」
暗がりの中でも、少女の青い双眸は強い力を持っていた。
「世界を信じられなくなった時は、空を見るといいよ……世界やこの街は美しいんだって、思い出させてくれる魔法だから」

戦争に関連するものは、すべて禁止される「プロバイダ撤廃令」。平和が訪れたものの息苦しい世の中になったが、そんなおりに、禁止された絵画を多くの人の目に留まるよう模写し続ける愉快犯「ヴァンダル」が現れ、世界を股にかけていくが…「ヴァンダル」と、彼らの行動に感動する人々を描く物語。第16回電撃小説大賞金賞受賞作。

これはよかった。
平和と引き換えに抑圧された世の中は、芸術を嗜む人ほど息苦しく、絶望とまではいかなくとも、無気力になっていて、それがかつては有名な人であればあるほど、痛々しい思いになります。

そんな人々の心を、感動で呼び覚ます「ヴァンダル」たちのやり方は……素晴らしいものがありました。一枚の絵が引き起こす衝動に、胸を打たれるんだなあ。
ウィーンで、ラスベガスで、フランスでと、その時その時で出会う人は異なるけれど、「ヴァンダル」の残した絵によって、動き始める人たちの話がとても素敵でした。

個人的に好きなお話は、ラスベガスでのカジノのルーレット回すお姉さんのお話ですね。ちょっぴり切ない胸の内と、これからを思わせるふっきり方が良かったです。

後半に入るとこれまでとは違い、「ヴァンダル」と、彼らを追いかけるインターポールの対策班がメインとなるんですが、敵対しつつも、平和のために芸術を抑えこむことが果たしていいことなのかと迷う警部がいたり、自分たちのやっていることは正義ではないと知りながら真実を求める人がいて。
気づけば、追うもの追われるものの間に、ある種の信頼関係が見えてくるところがありましたね。言わば、ルパンと銭形警部みたいな。あれは良かったなあ。

個人的には前半のような、一枚の絵が生み出す感動物語のほうが好きでしたが、最後の、真実を受け止めたあとに託された絵を見たら、泣き笑いになっちゃいました。うん、こういうお話好き。

ヴァンダル画廊街の奇跡 (電撃文庫) - 美奈川 護

ヴァンダル画廊街の奇跡 (電撃文庫)
美奈川 護

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