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蒼空時雨 / 綾崎隼

「あんたさ、もしかして結構、おっちょこちょい?」
俺の言葉に、階段を踏み外しそうになった彼女は申し訳なさそうに頭を掻いて。それから、あどけなく微笑んだ。
「右足が先走ってしまいました」
面白い表現を口にする子だなと思った。

アパートの前に倒れていた女の人は行く先が無いという。先が決まるまでという期間限定の同居生活が始まり、いつしかお互いの距離が縮まったころ、彼女は初めて秘密を語った。そして彼もまた秘密を抱えていて……雨宿りに端を発した六編の恋愛物語です。

これはとてもよかった!
美人だけど何一つ事情を話さない女の人との同居生活は、はじめは猜疑心やら何やらでギクシャクしたものがあったけれど、だんだんと自然になり、家の中に人がいることの心地よさみたいなのが見えてきて、これは……と恋愛脳がうずうずしてたら、それぞれの秘密を明かされて、うわーっとなった。まったく愛してるって、なんなんだろうと思わされましたよ。

しかも、その話は前編として途中で終り、次の章にいったら全然関係ない人たちのお話になるから、えー!と思うんだけど、これがまた憎い演出なんだ。

一卵性双生児の姉と妹の恋愛物語が、一編ずつ入り、妹の方は結婚した夫に浮気の疑いがあるというピリピリしたお話で、姉の方は、義理の兄との密かな恋が描かれるんですが、この姉の話が素晴らしいんです。

病弱な義兄と共にいたいがためにやってきたことを淡々と語っていくところは、とても格好よく、それでいて幸せを感じるものでした。そうなんだよなあ、何が幸せかっていったら、やっぱり傍にいることだよなあ。
親に気づかれないよう秘めたものだったけれど、お互いが傍にいるというただそれだけのために尽くした行動は、素敵なものでした。

それだけに、身体の弱い義兄が亡くなった後の彼女の行く末は不安を覚えるものがありましたが、こんな素敵な思いを届けられるなんて……。共に過ごした時間から、好きだという気持ちが伝わってくる描写には、涙を浮かべてしまいました。しかも、まだ終わらないなんて……

いつしか、この姉妹のお話に心奪われていて、ようやく序盤のお話の後編が始まるんですが、ここまでくると、まるで別のお話だと思っていた内容にリンクするものがあることに気づいてしまうから、恋愛の三角関係に困ってしまうんですよ。どの人もとても素敵だから。
人としての弱さはもちろんあるけれど、そんなものは誰しもが持っているし、それを受け止めてなお思いって残るものですよね。

雨から始まり、雨宿りを経た恋愛物語は、雨に打たれて冷たく思うこともあるけれど、優しさを感じるものでもありました。とてもよかったです。これはオススメ。

第16回電撃小説大賞選考委員奨励賞受賞作。

蒼空時雨 (メディアワークス文庫) - 綾崎 隼

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Comment:4

No Name 2010-01-28 (木) 19:54

こんばんは。立身流です。
のべるのぶろぐ2.0からきました。
同じ本を読んだのに私と全く感想が違うので、逆に興味がわきコメントさせて頂きました。

いつも、ブログを拝見させていただいてます。丁寧なレビューをお書きになっていて、自分には無いものを書いていて、正直、悔しいです。

長文駄文申し訳ないです。

それでは。

deltazulu 2010-01-28 (木) 20:33

こんばんは、立身流さん。
僕はとても気に入りましたが、全く違う感想を持ったと言うことは、同じ物語を読んでも、人それぞれなんですねー。興味深いです。

> いつも、ブログを拝見させていただいてます

ありがとうございます。これからも頑張っていければと思います。

こんじろう 2010-10-04 (月) 14:20

ものすごい遅いお礼になるのですけど、買おうかどうか迷っている最中このサイトのレビューのおかげでこの作品を買うきっかけになりました事にお礼を言います。ありがとうございました。ずっとお礼を言いたかったのだけど、どうもこういう所にコメントを残すのは苦手で今に至りました。

これからも悩んだ本でレビューしているのは参考にしていくので、宜しくお願いします。

deltazulu 2010-10-04 (月) 21:11

コメントありがとうございます。
僕の感想が読むきっかけになったとのことで、大変嬉しく思います。
わざわざ御礼まで!ありがとうございます。

拙い感想ではありますが、時間の許す限りは書いていきたいなと思っていますので、今後ともよろしくお願いします。

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