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夜魔 ―怪― / 甲田学人

「うん、あのね。小さい子供と一緒に眠るぬいぐるみさんはね、子供の見る悪い夢を食べてくれるんだよ」
私の問いに、少女は無邪気に微笑んで、まるでおどぎ話のような答えを口にした。
「だから小さい子達は安心して眠れるんだけど、ぬいぐるみさんのお腹の中には悪い夢がたくさん詰まってるから、危ないんだよ。子供に長く大事にされたぬいぐるみほど、たくさんの子供の悪夢を食べて、そのお腹の中に溜め込んでいるから」

あちら側から魅入られたものが、怪異と遭遇するお話を描く短編集。以下の四編が収録されています。

  • 交通事故で亡くなった幼なじみが横断歩道の白線に……「魄線奇譚
  • 幼い頃見ていた悪夢が大人になって蘇る……「繕異奇譚
  • 憧れの従姉妹を連れていってしまった桜をもう一度蘇らせる「接鬼奇譚
  • 魔女と呼ばれた少女の願いを描く「現代魔女奇譚

元々は単行本として出版され、文庫化を気に、幻想的なお話は「夜魔 ―奇―」(感想)に、怪談はこちらにまとめたとのことですが、いやあ、よかった。ゾクゾクさせられました。

怪異が現れて、それが何を示すかもわかってしまい、ここからどうなるかというのは薄々気づくのに、怖いんです。心臓がドクドク響くのが分かるぐらいに。怪異から逃れる方法がわかり、そこへあと少しで辿りつくと言うギリギリの展開が、とても面白いったらないです。もちろん、甲田さんですから……ね。

個人的に印象的なのは「接鬼奇譚」。 年上の綺麗な従姉妹のお姉さんに憧れていた人が、彼女の自殺をきっかけに変わっていくお話なんですが、これがギリギリくる。最後に会ったが故に自分を責めずにいられず、それでもようやく時間が心をなだめてくれたときに、姉さんが首を吊った桜の幻想に気づいてしまったら、もう逃れられないんですよね。

この桜は「夜魔 ―奇―」とリンクしてるんじゃ……と思ったりしてましたが、それはさておき、夜にだけ咲く桜から、ああいう発想に至るとはなあ。てっきり同じ道を辿るか、もしくは姉を救うために……と思っていだけに、彼の取った行動には衝撃を隠せませんでしたが、それでも、決して周囲には伝わらないとしても、彼にとってこれはハッピーエンドなんだろうなあと、そう思いました。

ただ、魔女とかMissingとの絡みは、ちょっとこの雰囲気に合わなかった気がします。もうちょっと違う感じにしたり、あるいは普通に怪談だけでも良かったんじゃいかな。

まあ、そのあたりは些細なことで、とても面白かったです。できれば、今度は長編を読んでみたいです。きっとすごいものを見せてくれると思うので。

夜魔―怪 (メディアワークス文庫) - 甲田 学人

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