小さくうなずいたホロは、いつもと逆の立ち位置だ。
ロレンスの弱さを許容するように、告解する信徒に許しを与える司祭のように、ホロはロレンスの頭の上に手を載せている。
ただ、本当に謝りたそうなのは、むしろホロのほうだった。
「謝るなよ。謝ったら、俺の努力が水の泡だ」
麦に宿り豊作を司る賢狼の少女・ホロと商人ロレンスの旅路を描く物語の第十弾。今回は、狼の骨の情報を手に入れて、海を渡りウィンフィール王国を訪れると、そこの修道院が経済危機に陥っており、、世界最強と名高い経済同盟・ルウィック同盟が修道院の土地を狙っているという噂が流れて……というお話。
あー、たまらん。ニヤニヤしまくり。ちょっとした謎かけから拗ねるホロとか、ルウィック同盟の男前な商人ピアスキーに嫉妬するロレンスとか見て、頬が緩まぬわけがない。特に、主語を省く天才ホロにロレンスがやられたシーンは最高だった。
さて、狼の骨話。
おとぎ話に近いことであるとはいえ、世界最強の経済同盟を相手にしたら、そう簡単に情報を明かすわけにはいかず、遠回りしながらの情報収集でしたけど、この「遠回り」がふたりの想いを見せてくれて、なんとも言えない気持ちになりました。一緒にいたいという思いは……難しいですね。
ならばとひとつの結論を出したホロでしたが、ここで彼女の誇りを揺らすような出来事が待ちかまえているとは思わなかった。「故郷」をこういう形で見せるとはやってくれる。
本来であれば、何事もなく過ごせたはずの場所で、大きな博打を打つ羽目になり、しかも人を動かすに足ると言えるほどのモノがない中で、ロレンスが動いたわけですが、ひとつの「故郷」を守れたことはよかったと思います。そして、もうひとつの大きな情報を手にしたことも。
ホロとの旅の素晴らしさを知りながら、「寄り道」の残り時間はもうそれほどない。この状況でロレンスがこれからどういう道を歩んでいくのか気になるところですね。
面白かったです。
狼と香辛料〈10〉 (電撃文庫)
支倉 凍砂
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