「なあ榎戸川」
「……何」
「俺たち二人で探ってみないか」
「何を」
「なぜ吉野彼方は自殺したのか」
校舎から飛び降りた女子生徒を巡る謎を、「変人」由良と飛び降りた女子生徒を目撃した榎戸川が追う、ミステリアスで切ない恋物語。
これは素晴らしい!!切なさの余韻に浸れるお話として、最高でした。
はじめは、人の心にズカズカと入り込んでくる「変人」由良の行動と、そんな彼の行動に振り回される榎戸川が繰り広げるミステリアスな展開に引き込まれてましたが、とある事実が発覚してからは一変しました。まさか、こんな落とし穴があったとは。
何があったのかがわかるにつれて、殺るか殺られるか、といった緊張感が高まっていくところにはゾクっとさせられるものがありました。ここから、追うものと追われるものの間で、火花が散るのかと思ったら、榎戸川を取りまく環境の変化から、無力感が見えてきて、あっさりな感じになり、ちょっと物足りなくもありました。
ええ、そう思っていたんです。後半を読むまでは。
読んでしまったら、もう……だめでした。胸が苦しくて、切なくて、なぜ彼女が、と思わずにいられなかった。
彼女が思いを込めた絵は、未完成の絵は、きっと由良の心に居場所を作ってしまったんだろうなあ。不器用な二人が生み出した世界が美しかっただけに、初めに立ち戻ったとき、切なくてやりきれない思いでいっぱいです。
これは今まで読んだ柴村作品の中で、最高の作品じゃないかしら。
全力でオススメです!
プシュケの涙 (電撃文庫)
柴村 仁
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