「ち、違う!わけがるのよこれには!」
違わない。わけなどない。スカートのホックが留まっていない。ファスナーが閉じていない。きちんとウエストがしまっていない。
「夏服と同じサイズで作ったから、ほら冬は下に着込むじゃない?だからきつくなって当然というか、」
「……何を着込んでるんだよ。なにを、きこんで、いるんだよ……」
「……キャ、キャミ……」
電撃文庫MAGAZINEに掲載された短編と書き下ろし短編を合わせたスピンオフです。
- ご飯の美味しい季節。太った大河がダイエットを決意したけど……「虎、肥ゆる秋」
- 川で溺れかけた女子大生を助けて、あわよくばと思った春田の妄想が現実に……「春になったら群馬に行こう!」
- 夏休み最後のイベントのバーベキューで、まさかのハプニングが竜児と大河を襲う「THE END OF なつやすみ」
- 台風直撃。園芸部のスペースを間借りした高須農場が心配になり……「秋がきたから畑に行こう!」
- 独身30の人生のドツボは22歳のときだった「先生のお気に入り」
ああ、楽しい!最近のようなシリアス展開もいいけれど、初期のとらドラを彷彿させるドタバタから繰り広げられる笑いあり、涙ありの展開は、気分が楽しくなりますね。「虎、肥ゆる秋」なんて特にそう。太ったことを必死に隠す大河、付き合いでジムに通いヨガに目覚める竜児、独自のダイエットを見せるみのりん、同情を通り越して大河のダイエットに使命を感じるあーみんなど、みんなの特色が現れるお話は、頬が緩んでしかたなかったです。
他の話も楽しさ満載でしたが、個人的に好きなお話は、春田の恋物語と独身30のお話ですね。
「春になったら群馬に行こう!」は、竜児の友人で軽さばかりが目立つ春田が、あわよくば、と思いながら、偶然出会った美人女子大生の恋の手伝いをしていたら、本気になってしまって、というお話なんですが、辛いよね。自分を大切にしてくれない人は。あわよくば、なんて軽い気持ちだったのに、気づけば本気になってしまったら、特に。
元カレとの話は、第三者だからこその冷静な指摘ができて、そのときの格好良さは素晴らしいものがあったけど、自分の気持ちとなると、迷いばかりが見えてしまうんですよね。どうすればいいのかもがく姿が、とても苦しくて、でも彼女のために笑顔を見せ続けたところが素敵でした。
間違いなく春田だったからこそ、の恋ですよね。素晴らしいです。
「先生のお気に入り」は、春田の話でも活躍してた独身(30)が、まだ教員になったばかりの頃の失敗を描いたお話。
いい先生ですよねー。みんなに親しまれるのがよくわかります。あれだけいろいろ失敗しながらも、決して他人のせいにはしないんですよね。落ち込むことは多々あるけど、特に仕事とプライベートの失敗が重なったこのときの出来事は、まさにドツボだったと思うけど、吹っ切って前を向いた姿が素晴らしかった。なんでいい人が現れないのか不思議に思っちゃいましたが、まあ、仕事熱心なせいですよねと思っておきます。
独身のファンならずとも、心を持っていかれるお話でした。ラストの疾走の爽快感が最高ですね!
さあ、次は本編の10巻ですね。今回のような楽しさとは違うシリアス度満載のような気がしますが、それもまた青春でしょう。楽しみに待っていたいと思います。
とらドラ・スピンオフ〈2!〉虎、肥ゆる秋 (電撃文庫)
竹宮 ゆゆこ
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