「……俺がお前を羨ましいと思うのは、前向きだからだ。ちゃんと前進しているからだ。どうすれば、そんなふうに前向きになれる?」
「『決める』ことだよ」
ちょっとだけ黙って、実乃梨は竜児の両目を静かに見返していた。
「自分で進む方向を決めること。それが定まらなかったら、そもそもどっちが前なのかもわからないじゃん。高須くんは、どこに向かってるの?行きたいところはある?それがなけりゃ前進できないぜ」
修学旅行で大河の気持ちを知ってしまった竜児が動揺する中、進路を巡って、母・やっちゃんと衝突してしまい……というお話から始まるわけですが、いやあ、すごかった。悩める青春まっしぐらですね!
みのりんのことは忘れられないんだけど、でも自分に向けられた好意を知ってしまったら、意識しないわけがなく、意識してしまったら、今まで気づかなかった思いを実感して……と揺れる男心が、これ以上ないぐらい伝わってきます。ズルズルと引きずる姿が、時にうっとおしく感じたりもしますが、それだけ真剣に悩んでるんですよね。
一度わかってしまうと、今度は周囲の視線も違って見えてくるんですよね。特に印象深かったのは、亜美です。誰よりも早く気づいてただけに、どうすればうまくいくか、自分ならうまくできるんじゃないかと、悩み迷いながら、噛み合わない歯痒さに苛立って。寂しさを強がりに変えてたことが見えてくると、心痛むものがありますが、もちろん、そういう悩みは亜美だけじゃなくて、みんな抱えてるんですよね。そのことに ―亜美だけじゃないですが― 気づいてほしいと思いました。
意外……といっては何ですが、独身(30)が、ちゃんと先生してるところが新鮮でした。進路相談のときに、竜児の迷いを、ああいう形で見抜くんですから。「反抗」という言葉が、これほどまでに竜児を縛っていたとはなあ。幼いころの思いとは、かくも深く刻まれるということか。
いや、やっぱり目の前で苦労を見ていたら……、せめて重荷になりたくないと思いますよね。このあたりは、やっちゃんももうちょっと話し合いに乗ってあげればよかったのにと思ったり。
やっちゃんとの衝突や大河の思いに悩んだ竜児がヘロヘロになっていく中、魅せてくれたのはやっぱりみのりんで。常に前を向き走っていく彼女の告白は、素直に格好いいと思いました。意地でもなんでもいい、頑張れ、みのりん。
おかげで大河との関係を壊さぬよう、ぎりぎりのところで踏ん張っていた竜児の努力がアレになってしまったんですが、ようやく……と思ったら、そっち側から話が飛んできたか。やっちゃんはともかくとして、なんだ、大河の家庭に何があったんだ?あーもう、こんなところで終わるなんて!
いったい二人は、どこへ行くのか。
続きがとても気になります。
とらドラ 9 (9) (電撃文庫 た 20-12)
竹宮 ゆゆこ
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