要するに幼馴染であり、そのため張り合い争っている関係。余計な樹を使わずにすみ、それなりに気を許せるところもあるにはあるが、しかし『負けたくない』『絶対弱みは見せられない』。前置きが長くなってしまったが、こうした私たちの間にある『緊張感』のようなものが、冬樹にあんなことをさせたのであろうことはまず間違いない。
以降は簡略に流そう。
私たちの冷戦は、思わぬところで勝負がついた。
―― 私が、恋をしたことで。
手紙を手にして背中合わせで佇む少年と少女という表紙に描かれているイラストから、11人の作家さんと6人のイラストレータさんが、想像力を膨らませて物語を紡ぐ電撃コラボレーションです。
どんな作家さんが書いてるかってのは、以下のリストを参照のこと。
- 作家
- うえお久光 「ラブレターズ」
- 時雨沢恵一 「先生かく語りき」
- 上月司 「恋のフレーズは紙一重!?」
- 有川浩 「恋愛のカミサマ」
- 中村恵里加 「代理戦争とその人生における諸問題」
- 五十嵐雄策 「僕とあなたの天体観測」
- 有沢まみず 「SMOKING GHAIN」
- 柴村仁 「タカチアカネの巧みなる小細工」
- 古橋秀之 「守ってくれる?アダムスキー」
- 岩田洋季 「シンデレラ」
- 成田良悟 「クランクはいつもアップアップ」
- イラストレーター
- 西E田
- むにゅう
- 京極しん
- 田上俊介
- さそりがため
- 三日月かける
- 山本ケイジ
一番面白かったのは、うえお久光さんの「ラブレターズ」。
夏香には、勉強にしろ運動にしろ、ずっと張り合っていた幼なじみの冬樹がいたけど、恋人ができたのは自分が先。大人になった自分を自慢していたら、ある日、冬樹がクラスメイト全員にラブレターを出す、と宣言して……というお話。
幼なじみの行動を止めようと思ったのに止められず、勝手にすればと思っていたのに、何かと気になってしまう、そんな夏香の複雑な思いが何ともいえません。本人は認めようとしないけれど、それは間違いなく……。
ひょんなことから幼なじみの行動の意味を知って、それは勘違いだと思い込もうとしていたのに、全員に配られたラブレターの一端として、手渡されたはずの手紙に、幼なじみの思いを感じて。
あのとき、夏香はどこまで心が揺れただろう。どこまで後悔しただろう。
想像するだけで、じわりと浮かんでくるものがありました。
最後がまたいいんだよなあ。きっちりとけじめをつけようとする彼女の姿に、惚れ惚れしましたが、できれば、もっと読みたかったです。さらにいうなれば、冬樹視点のお話も読んでみたかった。続きがでたら間違いなく買うけど……さすがにないかなあ。
楽しい恋愛モノとしては、上月司さんの「恋のフレーズは紙一重!?」が良かったです。
花菜下駄箱を空けたら、宛名も差出人もないラブレターが入っていて。ひょっとしたら気になるクラスメイトである陽二かも……と様子を見ていたら、陽二のほうも同じような手紙を受け取っていて、というお話。
まあ、陽二が受け取ったのは、ストーカーちっくなラブレターだったので、お互い目線こそあうものの、すれ違う感じではあったんですが、誤解が解けて仲良くなっていくところが、とてもよかった。
まったくもって宇宙人グッジョブですな。
切ない恋愛モノとしては、岩田洋季さんの「シンデレラ」が良かったです。
図書館で知り合った龍一先輩とのランデブーを描いたお話で、静かにしなければならない場所で、筆談をしながら、ちょっとずつ仲良くなっていくところが、とても微笑ましく、とても柔らかく描かれてて、読んでるこちらもきゅんとさせられてしまうものがあります。
ひょっとしたらうまくいくかもと、思い切った行動を優子がしてから、お話は切ない方面に走っていくんですが、龍一先輩の思いもさることながら、同じ人を好きになったという女の先輩の思いもまた、素敵なものがありました。
『シンデレラ』のように、時間がきたら魔法が解けるかもしれない恋だったのかもしれないけれど、彼女たちは決して忘れることは無いんじゃないかなと思わせてくれるものがありました。
このコラボレーションはいいですねぇ。来月もあるらしいので、楽しみにしていたいと思います。
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