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[三木遊泳] ゼペットの娘たち

意思を持つ金属ゼペット鋼によって、人形たちはより人に近いものとなり、ゼペット鋼と計算式の組み合わせで作られた心臓で動く「機鋼人形」は、秘書やメイド、愛玩用として、主に裕福な人々に受け入れられていた。そんな中、人よりも機鋼人形に興味を示す人形師の少年サツキは、発注を受けて少女ハリケーンを作成したものの、キャンセルされて借金を背負うことに。ハリケーンのご主人様探しと借金を何とかするために、サツキとハリケーン、そして犬型の機鋼人形トルネードは都会へと出てきたが、年齢が災いして、腕は良くとも仕事にありつけず……

人形にばかり興味を持つサツキと、生まれたばかりで何も知らない人形ハリケーンが、都会にいる人形師や人形のオーナーなどと出会って、経験をつみながら成長していくお話です。

これはいいお話だったなあ。
人形のことが気になって、夢中になったら、飲まず食わずで機械いじりしてしまうサツキと、そんなサツキが大好きなハリケーンのやり取りは、仲の良い兄妹のようで、とても微笑ましい。まあ、実際のところ、ハリケーンの思いは兄妹の感情とはちょっと違くて、そういう意味では、微妙なすれ違いもあるんだけど、ハリケーン自体、生まればかりなのでそのあたりをはっきりさせることができず、というあたりがいい具合にもどかしくなってます。

いずれにせよ、どちらも一般常識に欠けて、普通の生活はなかなかおくれない感じがあるんですが、それを取り持つのが、サツキと十年来の付き合いだという犬型人形トルネードだってのがいいですね。生意気だけど誰よりもしっかりしてて、でも「伏せ」とか命令されたら、従わざるを得ない状況とか、とても楽しかった。いい雰囲気ですよね、この三人。

で、都会では実績がないってことで、ひとまず簡単な仕事で日銭を稼ごうとしたら、仕事場で災難に遭い、仕事道具一式を失う羽目になったんだけれども、ここでロックハイム家の、特に長男アレックスと出会えたのは、彼にとって大きなことでしたよね。支援してくれるという言葉に反発するところには、彼なりの矜持とかプライドを感じるんだけど、それだけではやっていけないのを実感していくところが、なんていうか、これからのサツキには大きなことだったんじゃないかなあと思いました。

一方のハリケーンも、ただただサツキに付きまとうだけだったのに、お世話になってるロックハイムの面々とのやり取りや、人形であるエレガンテの決意などを見ながら、少しずつ物事を知っていって、少しずつ自立への道を模索しようとするあたりが良かったです。

サツキ側だけじゃなく、同じく人形師として出会ったニコとのやり取りも面白かった。女だてらに人形師を目指した彼女の壁のようなものが、トラブルを切り抜けていくことで、少しずつなくなっていく所がいいですね。特に人形師としてやっていくための言葉は、同じ道を目指すからこそ、だよなあ。

「機鋼人形師は作ったり整えたり、修理したりするのが仕事だ。いい、サツキ?君がこの仕事を選ぶなら、乱暴したり傷つけたりするようなことに手を使うのは避けなさい。だってそんな人に触れられるのは、人形たちだって怖いんだからね」

サツキの師匠の言葉が、心に響く。

いやあ、良かったです。いつか、ハリケーンが人権登録できるころ、彼女はどんな人をご主人様とするのだろうとか、いろいろ想像しちゃいました。これは続きが楽しみなお話ですね。
それぞれの成長もさることながら、サツキとハリケーンと、ひょっとしたらニコなんかが絡んでくるかもしれない恋愛要素も楽しみなので、いろいろ期待していきたいです。

ゼペットの娘たち (電撃文庫 み 11-3) - 三木 遊泳

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