「じゃあ、さっき一緒に歩いていた女性は誰なんですか!?」
「いや、あれはな……」
珍しいことに、親父の言い訳のキレが悪い。
「わあっかりました!」
「いや志乃、少し落ち着いて話を聞いて……」
「聞きま、せんっ!そして今度という今度は許しま、せんっ!」
取り付く島もないとはこのことだ。
「実家に帰らせていただきます」
家族全員が正義の味方である星弓家のお話の第五弾。今回は、度重なる夫の浮気にキレた母・志乃が、「実家に帰らせていただきます」と言い出して……というお話。
異世界からきたお母さんが実家にってどこよ!?と思ったけど、夫の父親のところなのね。気づかずにあちこち探しまくる夫と家族たちはどうかと思ったけど、それはともかくとして、家出をしておきながら、迎えに来てほしくて、ついつい自分の居場所を言っちゃうところが、また可愛らしいことだ。
みんな心配しつつも、どこか最後のところで心配しきってないのは、こういうお母さんの性格がわかってるからなんだろうなあ。
ただ、いつもより怒ってるってことで、居場所を知らせても表には出てきてくれなくて、代わりにおじいちゃんが立ちはだかるんですが、このじいちゃんがいいノリしてたなあ。かつて、世界を手にできそうだった悪党……というわりには、なんていうかテキ屋の親分っぽい感じなんだけど、「お母さんを帰してほしくば、わしを倒してみろ」みたいなノリで、お母さんもヒロインモードに入ってて(考えてみればお姫様だった)、ついついおじいちゃんの悪ノリに乗っちゃうから楽しいんだ。さらには、おそらく地球最強な次女・七美までもがお母さん側に寝返っちゃうから、もう大変。
毎度毎度返り討ちにあう、夫・耕作や長男・軋人たちの様子に笑いまくってました。
ここまでだったら、普通にコミカルなお話だったんだけど、じいさんがふとまじめな顔して、「もし、あちらに戻れるとしたら」なる話しをしてからが、非常にこのシリーズらしい家族のつながりを感じられるお話になってましたよね。
決して帰りたくないわけじゃない。向こうには両親もいるし、姫としての立場もある。それでも、帰るかと聞かれて、即答した志乃の言葉にじわりときました。ああ、素敵だ。ほんと素敵だ。
またお母さんとお父さんの馴れ初めも素敵なんだ。異世界に勇者として呼ばれたお父さんだけど、都合の良い道具として扱われることに嫌気が差していて、そんな中、唯一彼を人としてみてくれた女性がお姫様で。このときのお父さんは、とても気障だと思ったけど、それがぴったりハマるぐらい格好よかったです。
お母さんを帰すためのおじいちゃんのツテが、思いも寄らぬ方向から暴走し始めてしまったけれど、子供たちが抱く母への愛情と、愛する人を守ろうとする夫の戦いに、じんわりです。ああ、やっぱりこのシリーズはいいわ。
いつもより、ちょっとハデさがないけど、温かさはたっぷりでした。
いくつになっても、熱々ロマンチックな夫婦に乾杯!
世界平和は一家団欒のあとに 5 (5) (電撃文庫 は 9-5)
橋本 和也
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