「じゃあ、その上で、だ。その上で、君は僕に、一体何を望むんだ?」
フィフはもぞもぞとベッドの上に両足を引き上げると、きちんと正座をして姿勢を正した。
「拙は、拙の使命は、あの男と、あの男の生み出した≪禁書≫を封印して≪虚ろの図書館≫に戻すことじゃ。それには≪まいすた≫の助力が必要なのじゃ。なぜなら、拙は≪まいすた≫がおらねば≪本≫から出ることも叶わぬ。戦うための武器も出せぬ。じゃから……フミヒト、拙に力を貸しておくれ」
本を読むことが嫌いな文人が、図書館の整理を言いつけられたときに、ふと見つけた「飛び出す絵本」を手にしたら、中から美少女が飛び出してきて……。「生ける仕掛け絵本」から飛び出してきた美少女フィフと、そのマイスターとなった文人が、「仕掛け絵本」の中でも、人間に影響を及ぼし「本」へと変えてしまう「禁書」を封印するために奮闘するお話です。
これは面白かった。読書が嫌いと言ってるけど、頑なに本を毛嫌いする文人の姿には、親への反発が見えてきて。ひょっとしたら、幼いころは、本とすごす時間があったんじゃないかなーとか思ってしまうのは、本に埋もれて生活していることを羨ましく思うからかもしれない。ま、親の心、子知らずとはよく言ったもので、文人に対するお母さんの信頼っぽいものが、チラッと見えるのはよかったかな。
ともあれ、「禁書」だの何だの言われたところで、普通なら信じられないことですが、絵本から女の子が出てきて、さらには自分の身に本の影響があって、さらには、マイスターの資格を持つ文人が、絵本に仕掛けを作ったら、中から実物が出てくるようになるんだから、信じるしかないわけで。
禁書云々はともかく、フィフの真剣な願いを聞いたら手伝おうと思うあたり、ちょっと斜に構えてるところがあるのに、実は人がいいという文人の魅力が伝わってきますね。
彼の周りで「仕掛け絵本」の影響が早くも出始めて、禁書は誰の手に?みたいな謎が提示されたものの、非常にオーソドックスなので、特別迷うことはありませんが、恋する乙女の心を利用するあたりは、なかなか邪悪なものがありました。クラスメイトを人質にされて、はてはフィフまで囚われて。
たいした力もなく、ただついてきただけの文人が如何にして切り抜けていくのか。
タイトルにもなってる短い鉛筆を使って、ちょっとした詰め将棋のように、相手を追い詰めていく手腕が面白かったです。
さて、ひとまず事件をひとつクリアしましたが、肝心の心臓方面はまだ残ってますし、個人的には、今回の被害者である雲木さんとも何かあってほしいなあ。いや、だって、このままじゃ、可哀想じゃないですか。内気な女の子が、ちょっとだけ見せる積極性とかは、すっごい好きなので、フィフを嫉妬させるぐらいのことをやってほしいですね。
あ、あと、最後にちょっとだけ登場したにもかかわらず、ものすごく萌えさえてくれた≪虚ろの図書館≫の司書・グリーズは、今後も登場してほしいな。
司書とハサミと短い鉛筆 (電撃文庫 ゆ 1-18)
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