「実は裕人さんにお話したいことがあったんです」
「お話?」
「は、はい。お話というかお願いというか……」
「?」
「あの……」
「?」
「そ、その……」
「??」
「あ、あの裕人さん、こ、今度の日曜日……私と、その、デ、デ、デデデデートをしていただけないでしょうかっ?」
天然で、お嬢様らしからぬ秘密を抱えていた乃木坂春香を守るために、秘密を知ってしまった綾瀬裕人が、何かと世話を焼いていくうちに、だんだんと二人の距離が……という気恥ずかしくも、温かい気持ちになれるラブコメシリーズの第八弾。
今回は、春香と裕人の「初デート」と、メイドと執事が集まる親睦会に裕人が招待される話と、春香の妹・美夏に呼び出されて彼女の通う女子中学校に裕人が向かうお話と、最近様子のおかしい椎菜が怪我をしたというのでお見舞いにいくお話の四編からなるお話です。
いやあ、面白かったなあ。「デート」が初めてとは驚きましたが、そうかそうか、あれほど散々二人で出かけたりしてたのに、たいてい春香に何らかの目的があって、それに裕人が付き添うという形のお出かけだったので、デートしようという形になるのは初めてなのか。
ドキドキな密着を経験したのがつい先日というだけあって、いたって普通の遊園地模様なのに、クーとかなってしまう僕がいる。
そんなふたりのデートの合間に、以前登場した芸能プロダクション関係の茅原が、バレバレの策略を仕掛けてくるわけですが、まあ、それは置いておくとして、お化け屋敷、観覧車といったところで、お約束な展開を見せながら、胸の中がぽわっと温かくなるようなやり取りをみせてくれて、ほんと素敵でした。あとちょっとなだけに残念ではあるんですが、ま、このもどかしさがいいんですよね。
メイド×執事の親睦会話では、ようやく乃木坂家の序列持ちメイド全員集合かと思ったら、ちょっとした謎があるみたいですね。いずれこのお話も出てくると思うけど、そんなことより、ここでの裕人は熱かった。他人のために頭を下げることを恥と思わない心と、大切な人たちを馬鹿にされたら怒ることができるところが、裕人のいいところだと思います。
また裕人ファンが増えちゃったような気もするけど、まあ、彼女なら問題ないか。
美夏の学校へいくお話は、美夏とそのお友達の無邪気さがすっごいかわいいんだけど、無邪気すぎるぜ。こんなことに遭遇して、普通に対処できる裕人には、尊敬の念すら浮かんでくる。
何といっても、ここでは美夏がかわいいよねー。実は生徒会長だったという普段とのギャップもいいけれど、裕人を前にして、みっかみかにしてあげるんだから、と言ったときのシーンは、本気だったろうなあと思ってにやり。
まあ、お姉ちゃんの次にという気持ちだと思うけど(お姉ちゃんのものを取ろうとはしないだろう)、残念ながら裕人は春香ひとすじだしねー。
これは次の椎菜話でもいえるけど、お見舞いに来た裕人と話せることがうれしくて、ついつい引き止めてしまって、ふと寄り添ったり、思いつめた言葉を放ったり、「二度目」をしたりと、積極的なことしまくってるんだけど、まるで気づかぬ裕人よ、おまえってやつは……。ちょっと椎菜が可哀想に思えるけど、個人的には春香とにゃんにゃんしてほしいので、ここは我慢しやがってくださいと思ったり。
いやあ、楽しかった。
最後の最後で、一編目の問題が浮かび上がってきましたが、さて、春香はどうするんだろう。お父さんは許しませんよ、だと思うので、一大騒動になりそうで、続きがとても楽しみです。
乃木坂春香の秘密 8 (8) (電撃文庫 い 8-14)
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