昔かたぎの大工だった桜田源之助は、若社長のやり方についていけず、会社を辞めたが、頑固親父っぷりが災いして、次の職が決まらない。しかたなしに、世界征服を狙う秘密結社の下っ端戦闘員となって、日夜黒タイツに身を包んで、結社の倉庫番をしていたら、ある日、秘密結社が総力を挙げて、誘拐した天才少女・真木麗華(10歳)を、預かることになってしまった!
その日から桜田家は、騒動ばかりが繰り広げられて……
秘密組織の下っ端戦闘員の桜田さんの家で、誘拐した天才少女を預かったところから始まるホームコメディものってところかな。これは楽しかったですねぇ。何といっても、桜田家の雰囲気が素敵!
はじめは、源之助の亭主関白というかゲンコツ落としな頑固親父っぷりに、いつの時代だよって思ってたんだけど、いつも笑顔をたやさない扶美枝と、ゲンコツ落とされても、父ちゃん、母ちゃん大好きな、一人息子の源太郎が見せてくれる家族愛にやられました。
連れてこられた直後には、すぐにでも逃げようとしていた麗華が、逃げるのはいつでもできると思うようになっていったのは、その雰囲気を羨ましく思ったからなんでしょうね。
このあたりの心の移り変わりや、桜田家のやり取りを見ていた麗華が、だんだんと他人を思いやる気持ちを覚えていくところとか、ほんと良かったですね。今までわがままいっぱいだった少女が、悪いことをしたと思って謝ることができたところには、ぐっとくるものがある。
桜田両親の馴れ初めやら、源太郎の心の奥底を見ていくうちに、気づけば桜田家の居心地が良くなって。でも桜田家は、誘拐犯の一味で。何とかしないとなあと麗華がぼんやり考えていたら、事態が急展開して、桜田家が一気にピンチになっていくんですが、ここで思い切った行動を取ってくれるから、麗華がいいんだよなあ。
ためらいもなくばっさりと切った姿が格好良くて、源太郎と麗華のどこまでもどこまでもいけそうな自転車の逃避行のシーンが、この作品の一番印象に残ったところでした。
いやあ、面白かった!こういうホームドラマ的なお話大好きです。
この後、源太郎と麗華が、どういう関係になっていくのかってのは、想像するだけで楽しくなりますよね。
桜田家だけでなく、真木家にも愛情が見えてくるお話に満足です。
第14回電撃小説大賞最終選考作。
桜田家のヒミツ―お父さんは下っぱ戦闘員
柏葉 空十郎
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