「逃げてない!」
考えるより先に叫んでいた。
「秋人はきっと……きっと……」
「助けに来る ― か。いやはや、盲信というのは恐ろしい」
芝居ががかった仕草で頭を振ってから、真冬ちゃんは出し抜けに、ぞっとするような笑みを浮かべた。
「なら訊くがね、結夏。君は秋人のなんなんだい?」
オチこぼれ陰陽道の占家・秋人が、バラ撒かれてしまった二十二枚のタロットカードを集めて封印するお話の第五弾。今回は、連れ去られた結夏を、秋人たちが救出に向かうお話です。
前作は、上下巻構成の上巻にあたるお話だったこともあって、ラブコメ方面は楽しくとも、話しが進まないなあーと思ってたんですが、今回は動きまくりでしたねぇ。まあ、これはアメジスティアが動いてくれたからなんですけど。
結夏のことで呆然としていた秋人を、自分の地位のためにと言いながら叱咤する姿に、倒錯した思いを感じました。普段はクールなのに、秋人が絡むと、冷静になりきれないところに、にやりとしてしまいます。
おかげで、秋人も結夏を助けるために動き出すんですが、いったい結夏は秋人にとって何なのかってところで、いろいろ迷いが見えてましたね。流されてハーレム状態になってたけれど、その女の子が自分にとってどんな存在かということを見つめなおすのは、初めてじゃないかしら。
これは囚われの身となった結夏も同じで、秋人にとって自分という存在は何なのかと考え始めてくれて。
今後二人の関係にどう影響が出てくるのか気になるばかり。
で、前回惨敗だった相手に対して、どう救出劇を繰り広げるかというところで、各自が試行錯誤を繰り広げていくんですが、ついに秋人が覚醒し始めた……と言っていいのかな。「能なし」とまで言われながら、なぜ次期当主に選ばれたのかが見えてきて、なるほどなるほどと思ったり。でもまだいろいろ隠されてますよねぇ。そもそも、結夏にも謎があるみたいだし。
ま、そんなことよりも、タロットを道具として扱わず、人として接し、人として力を借りる秋人の思いが良かったです。操られてる結夏に、彼女の武器であるクロスを渡せる信頼が素敵でした。バカと言いながら、クロスを握る結夏の嬉しそうな姿が、とても印象的でした。
いやあ、面白かった。
秋人や結夏の謎もさることながら、タロットにも新たに見えてくるものがあって、気になりますね。ジブリールは事情を知ってるんだろうけれど、制限があって駄目だし、神祗七役の最後の一人のファンキーな婆ちゃん、志摩桜も、いろいろ知ってそうだけど、あれは素直に教えてくれるタマじゃないしなあ。
むしろいろいろ引っ掻き回してくれそうですが、それでも何だかんだ言いながら、手助けしてくれそうな気がしないでもないので、楽しみに待っていたいと思います。
タロットの御主人様。(5)
七飯 宏隆
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