「群狗よ、妾は決めたぞ!」
固い決意に握り締められた両の拳、興奮のあまり逆立つ後ろ髪、身の内から湧き上がる感情を抑えきれずにくるくるとに回転する。両の瞳を爛々と輝かせて見つめる胡同の果ては、今もあの男がいる河畔へと続いているはずだ。
「妾も剣をやるっ!」
皇女とはいえ十八番目の末娘であるが故に、お役目も無いまま、退屈な日々を過ごしていた月華(ベルカ)が、お忍びで町を出歩いていたら、「言愚」と蔑称される山岳民族の涼狐(ジャンゴ)の剣舞に見惚れて……という中華風ファンタジー物語です。
いやあ、面白い!
初っ端に、群狗(グング)と呼ばれる老人が、かつて「龍」に出会ったと過去を語るシーンがあるんですが、これがすごいんです。敵陣の真っ只中に現れた女性、10人、また10人と斬りすすむ姿が、淡々と語られながら、圧倒的強さを感じられて、ああ、この剣舞は、なるほど龍を思わせると、ゾクゾクさせられます。
その老人が、今は月華の面倒を見る立場にいるんですが、この月華が、世間知らずなくせに好奇心旺盛だから、なかなかに大変なんですけど、愛らしくもあるんですよねぇ。身分を気にしない率直な態度は、普段はともかくお忍びで町に出たときとか、非常に危なっかしいんだけど、頼りになる町のお姉さん、珠会(シユア)がいてくれるおかげで、なんとかなってるようで。
商人の娘だという嘘に気づきながら、珠会が月華の世話を焼いているのは、きっと彼女の真っ直ぐさに好感を持ってるからなんでしょうね。ふたりで軒先とかで西瓜食べてるシーンが、とても微笑ましいものがありました。
そんなお忍びの日に、涼狐の剣舞と出会って……剣を習い始めるという発想に進む月華は、なんともらしいものがありましたが、剣で戦うために涼狐を追いかけていく姿は、まるで恋をした乙女のようで、なんとも楽しいものがありました。身分的に底辺を行く涼狐の戸惑いもまた面白い。
保身から月華を突き放して、でも……と悩んでいるときに、同じく悩んでいた月華の背中を押した珠会にグッジョブです。
いやあ、面白かった。まだまだ序盤という感じのお話なんですけど、ボーイ・ミーツ・ガールなお話の間に、少しずつ見えてくる「龍」の気配にゾクりとさせられます。いったい彼や彼女には、どんなモノが眠っているんだろう。まだ実践で使われていない二人の剣は、どれほどのモノを持っているのかとか、いろいろ想像が止まりません。
これからさらに面白くなるであろうことを予感させるお話だっただけに、続きがとてもとても楽しみです。
オススメ!
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- 「お主はすごいのだ!世の男どもをすべて合わせてもお主には及ばん!妾は来る日も来る日もお主のことを考えて剣を振っているというのに、お主にそんな平気な顔をさ...
Comment:1
- ジャラル 2008-05-14 (水) 11:33
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秋山先生の新作は最近日本でも流行中の武侠アクション、社会の最下層にいるが謎の老婆より剣技を教わった涼狐、お姫様だが天賦の才能を持つ月華が出会って・・・今回は「出会い」編ですが、次回はいよいよアクションシーンとかあるのでしょうね。
私は時々話の合い間に出てくる芝居の話が良いですね。ボンボンに必殺技伝授しようとする元悪党の拳法家の話と人間の女の子に惚れたネズミ妖怪の話、正直こちらの話を煮詰めたほうが・・・と思ってしまいます(笑)。





