ここは東京駅11番ホーム。地図に存在しない、出会いと別れの交錯場所する場所。
わたしたちはあなたのお帰りをいつもお待ちしています。
いつまでも、ずっと……。
いろんなサイトで評判がよかった記憶があったので手にとって見ました。
C.D.と呼ばれる高密度次元圧縮交通技術により、日本―ヨーロッパ間が二時間半で結ばれるようになった近未来の世界で、上空2200mに浮かぶ東京駅の11番目のホームに勤める少女T.Bと、ポンコツアンドロイドな狼の義経、人工知能のアリスに、今日も事件が舞い込んで……みたいなお話です。
高密度次元圧縮交通技術とか、人工知能とか、遺伝子うんちゃらとか、いわゆるSFっぽいお話なんだけど、あんまりガチっとした印象を受けなかったのは、駅に対するT.Bの思いや、それを取り巻く義経やアリスの雰囲気が良かったからかな。
彼女自身に纏わる話や、そこを経由する荷に対して、政治的な思惑から、国際問題な危険が押し寄せてくることもあるんだけど、「約束」を信じて、駅を、客を守るために、一歩として引かず、立ち向かう姿は、本当に胸を打たれるものがありました。
そんな彼女を守ろうとする狼の義経が、またいい味出してるんだよなあ。口げんかすると伝家の宝刀「一週間、エサは野菜だけ」攻撃が待ってたりして、毎回毎回負けちゃうんだけど、どっちかというと彼女を立ててるようにも見えるから、いい狼さんだ(いや、ホントに負けてるのかもしれないけどね)。口ではかわいくないことをいいつつも、T.Bに危険が迫ったときには、一瞬の躊躇もなく、身を挺する姿に、惚れた男の強さを感じました。うーん、いいなあ。こういう意地っ張り。
無感情っぽい人工知能アリスも、時々むくれたような態度を見せてくれて、ああ、この三人の雰囲気は、ほんと素敵だと思いました。
その素敵な空間だからこそ、「ローレライ」によって、危険が迫ったときには、ドキドキするものがあったんだけど、あったんだけど……ぎりぎりでドキドキ度が盛り上がっていかないのは、会話による説明が多かったからかなあ。こうなるぞ、こうなっていくぞ、というところに、動きがないせいか、緊迫感の割りに、ちょっとこう、盛り上がりきれないところがありました。
とはいえ、あのラストで、全員で願った「止まれ」の言葉には、グッと歯を食いしばるものがありましたけど。
いやあ、面白かった。結構殺伐としているような気がするんだけど、不思議と透明感や温かさを感じるお話でした。これは結構好きかもしれない。
最後の最後で例のところと因縁らしいものが見えたし、T.Bや義経にもまだまだ秘密がありそうなので、続きが出てくれたら、うれしいですね。
θ―11番ホームの妖精
籘真 千歳
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