「……おっさんの魔族の涙なんて心底からどうでもいいけど、若くて美人になる限りない可能性を秘めている魔女を殺されるのは、将来の俺にとっての莫大な損失だな」
「おまけに彼女はフィーナの友達よ、仲よしが死んだりしたら、あんたの妹はさんざんn泣いて可哀想なことになるもんね」
「あんたのためじゃないけどいいよ。協力してやる」
落ちこぼれの魔法使いスウェナと、人型になれるドラゴン・メリルの子供たちであるセツ(魔属)とフィーナ(半魔)が繰り広げる恋物語。今回は、ラースの故郷からの帰り道で馬車が立ち往生して、魔法学校の同級生ナインの住む村に立ち寄ったら、そこは部外者を疎外する雰囲気があって……というお話。
とても可愛いお話だったなあ。「好き」という気持ちが、これまでよりも膨らんでしまって、ラースを直視できず、何かと真っ赤になってしまうフィーナの様子に、微笑ましくなってしまいます。本人はいろいろ戸惑って、時に不安を覚えることがあるみたいだけど、ラースがいい感じに王子様やってくれてるので、大丈夫だよね。
で、ナインの村。ナインだけでなく、同じく同級生のリリーという少女も訪れていて、フィーナとの仲を深めてくやり取りも良かったです。ナインとフィーナだけに心を開く少女の、普段見せない涙に温かくなる。
友人たちとの話はよくとも、ナインの故郷・グナン村のお話は、ちょっと切ないものがありました。行き違いから生まれる誤解は、人と魔族の間の溝の深さを感じさせますし、それが故にフィーナたちにも大きな影響を与えそうで……
でも、この村の生い立ちに関わる魔族のお話は、決して不幸じゃなかったから、分かり合えるような世界になっていって欲しいな。
それにしてもラストがすごかった。ようやく実家に戻ったと思ったら、可愛い娘が婚約者を連れてきたんだから、そりゃお父さんの心中は……ね。取り繕いながらも魔力が暴走しちゃうあたりに、メリルの心境が伺えます。ニヤニヤしまくり……ってたら、何やらフィーナのことで、不穏なものが出てきたので、いったい何を???と気になる終り方でした。これは続きが楽しみ。
ちなみに今回もセツの恋(?)は実らなかったので、タイトルに偽りはなかったです。
失恋竜と契約の花嫁 ~とまどいのキス~ (B’s‐LOG文庫)
渡海奈穂
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