「実はオレ達昨日の夜……」
全員が息を呑み、室内が水を打ったように静まり返る。
「魂が入れ替わってたんだ!」
一年生五人で作った文化研究部。しっかりものの稲葉姫子、明るい長瀬伊織、快活な桐山唯、軽い青木義文、のんきな八重樫太一は、いつものように部室に集まったが、奇妙な現象に直面していた。それは「人格の入れ替わり」。時、場所、入れ替わり時間など、まったくランダムに五人の人格が入れ替わるようになってしまったのだ。なぜと悩みながらも、何とか他人に気づかれぬよう過ごしてきたが、やがてそれぞれの抱える心の闇が見えてきて……という青春物語。
面白かった。でもいろいろ残念すぎる。
部活メンバーの人間関係がとてもいい感じなので、人格が入れ替わるという設定は、ワクワクさせるものがあるんだけど、初めは表記がわかりづらかった……稲葉【太一】みたいに人格と外見という表記の差れ方はどうもね。理解するまで時間かかったし、理解しても慣れなかった。
それはともかく、主に太一の視点から物語は語られ、彼自身は戸惑いながらも楽観視していたし、他のメンバーも、生理的なものはちょっとアレだったけど、部活内の力関係は、女性陣の方が上ということもあって、比較的コミカルな感じで話が進んでいましたが、ある時、桐山唯のトラウマが見え始めたところから、話が一気に面白くなりましたね。
精神と肉体が一致しないことは、本来とても怖いことだと思いますが、入れ替わることで築けることもある。いくら仲が良くても言葉に出来ないことはあって、そういったことが赤裸々になっていく恥ずかしさや辛さがあるんだけど、それをわかった上で受け入れてくれる仲間がいる。そんな信頼関係を見せて行く過程がとても良かったです。
まあ、あまりにアレなんで太一ぱねえ!と思ったけど。
ただ、青春模様はとてもよかったけど、もやもやするのも残りました。この入れ替わりの原因はなんだったのかってのがはっきりしなかったからなあ。
人外の力ってのはいいとして、じゃあなんで彼らが?とか、最後の選択は何のために?とか、すっきりしないまま終わるから、消化不良でした。せっかくいい感じの話だったのに……無理やりでもいいから(というと語弊があるかも)、何らかの形を見せてくれたらと思いました。
第11回えんため大賞小説部門特別賞受賞作。
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