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空色パンデミック(1) / 本田誠

「そうだね。親しい人間って言い方はちょっと語弊があったかもしれない。正確には、患者が好意を抱く人間なんだ」
「よけい分からなくなったよ。僕とあの人はそれまで一言も口を聞いたことがないんだ。彼女が僕に好意を持つ理由なんてない」
「馬鹿だなあ、一目惚れって言葉があるじゃないか」

発作を起こすと、自分を映画や小説の主人公のように特別な存在だと思い込み、その妄想に支配される「空想病」。高校受験当日、親友の敵として僕に声をかけてきた結衣さんは、その「空想病」患者だった。そのことがきっかけで、素に戻った彼女に何かとつきまとわれて、時折始まる発作に付き合っていたら、まさか僕が世界を敵に回して戦うことに……誰もが一度はしたことのある空想が、世界を動かすボーイ・ミーツ・ガール。

これは楽しかった。
空想病には、自分自身にだけ影響のある「自己完結型」と、他人にも影響を与える「劇場型」の二種類があり、いずれにせよ、発作が起きたときには、何らかの形でエピソードを終わらせないと発作が止まらないため、周囲の人達はうまく演技をして完結に向けて誘導しなければならないんです。

まあ、いきなり言われたところで、簡単に動けるわけもないんですが、患者さんは、素に戻っても、発作の時のことを覚えてるから、いろいろ恥ずかしいわけで。
初めはわがままで大人ぶってて、何かと主人公を振り回す結衣がうざく感じるんだけど、その裏に隠れてる照れ隠しやら恥ずかしい心情やら、何より女の子な部分が見えてくると、途端に可愛く思えるんですよね。まあ、主人公は鈍いけどさ。

このお話でもうひとり重要なのが、同級生の青井晴。女装が趣味で、制服(女子)が可愛かったから、ここの高校を受験したと言う(服装自由高校)ちょっと変わった子ですが、学年首席&しっかり者なんですが、実は「劇場型」の妹を持つが故に、苦労をしている様子が見えてくると……すっごい青春ものになってくるんですよね。海からの帰り道は、とても甘酸っぱいドキドキを感じました。

プロローグで、思いっきりシリアスな場面があったけれども、きっと空想病が原因なんだろうなと思っていたら、まさか本当にシリアスな方面に話が進んでいって、びっくりでしたが、好きでも嫌いでもなく、ただ傍にいるだけの存在だった結衣との間に壁が見えたときの主人公の決意と覚悟がとても素敵でした。オチもうまいぞ、こんちくしょうめ。

いやあ、面白かった。でも、これシリーズ化するの?なんかとても綺麗に終わってる気もするんだけど……。ああ、でもまだいくつか残ってることもあるか。
個人的には一冊ものでいいんじゃないかと思いますが、いろいろ気になるのでに管が出えたら読んでみようと思います。

第11回えんため大賞小説部門優秀賞受賞作。

空色パンデミック1 (ファミ通文庫) - 本田誠

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