「いい事を教えてやる。浅井ケイは、間違えないんだ」
「……間違えない?」
「そう。あいつが助けようと思って、助けられない奴なんていないんだよ」
人口の約半数が能力者という咲良田の地で、世界を巻き戻す「リセット」という強力すぎる力を持つために、公的機関の「奉仕クラブ」に所属することになった浅井ケイと春埼美空が、遭遇する出来事を描くシリーズの第三弾。今回は、ケイと春埼の出会い、そしてふたりを引き合わせた「未来視」相麻の死を描く始まりの物語です。
純粋な思いって、時に残酷なんだなあ。でも、その残酷さが、醜さが、悲しさが、美しい。
相麻によって引き合わされた二人だけど、ケイが春埼に惹かれたのは、彼女の思いの美しさを知ったからだと思います。リセットという能力が便利であるということは、あくまできっかけでしかないですよね。口では悪ぶりながら、常に相手のことを思い、その優しさが信頼を培っていって、ただ流されるだけだった春埼が、自らの思いでケイに助けを求めるに至る、その過程がとても良かった。
一方、すべてを見透かすような相麻の思惑はなんだったのかというのは、二年後である現在に繋がるお話になるんですが、彼女の思いも、考えるとやるせなくなるなあ。能力によって人を動かすことはできる、でも能力があるからこそ見えてしまう未来を、どんな思いで見つめていたんだろう。目的のために心を殺す、それははたして自分で決断したことなのかと迷う姿を見ていると、支えてほしいと思う気持ちが生まれてもおかしくない。でも、春埼がいなかったら……という if は、彼女には通じないからやるせなくなる。
ひとりの思いを外に置き、自分から動くことの無かった春埼が、自分ルールに則って動く決意をして、そんな彼女の願いを叶える為、母と娘の絆を結ぶ為、ケイを中心に皆で動き、失敗と、リセットと、傷と騙しと、そして世界で一番美しいものをみせられて、胸が切なくなった。
一段落したあとの展開は、なるほど、これはケイが相麻を取り戻したいと思うわけですが、実のところ、未来が視える相麻がなぜ亡くなったのかはわからない。もしかしたら、好きな人の好きな人に、涙を流させるためだった……というのは、いささかロマンチックすぎるかな。
彼女が秘密と言った以上、そう簡単に明かしてくれることはないかもしれません。でも、きっと声は届いているだろうから、いつかきっと伝えてくれる時がくると、そう思いたい。
サクラダリセット3 MEMORY in CHILDREN (角川スニーカー文庫 215-3)
河野 裕
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