「ね、お姉ちゃん、私、ひとつおねがいがあるの」
「なあに?」
「今度、時砕きのぼうけんのおはなしをして」
リンネは破顔した。それが、会心の笑みであることをぼくは知っていた。
「いいわ、じゃあ今度、しおりちゃんがびっくりするようなとっておきのお話をしてあげる。こう見えても私、誰も知らないわくわくする大冒険はいっぱい体験してるんだから!」
本を読むことで、生きるための必要な滋養と、時を止める力を得ることができる「時載り」一族。人間と時載りのハーフである元気いっぱいな女の子リンネと、そんな彼女に振り回される久高が繰り広げる冒険物語の第五弾。今回は、大晦日からお正月を過ごすリンネたちの前に、新たな「街の住人」が現れて……素敵な出会いと、父親の行方の核心が見えてくるお話です。
やっぱりこのお話好きだなあ。
大晦日のせわしなさ、お正月のまったりさ、そんな日常をリンネと共に過ごすと、当たり前のことすら、楽しく感じてしまう。振り袖姿を久高に見せて照れたり、そんなリンネをみて久高も照れたり。凪はお兄ちゃんにむくれつつ、一緒にいられると喜んだり。ほんと素敵な雰囲気です。
個人的に一番好きなふたりのシーンは、パーティに向かうときに腕を組むところ。まったくリンネはおしゃまさんなんだから。
そんないつもの様子もさることながら、新たに出会った「街の住人」との話もいいんだ。絵描きである鷹見とその娘しおりとの出会いは、彼女に大きな影響を与えましたよね。特に妹のような存在となったしおりは、リンネをお姉さんにしてくれて。ああ、人はこうやって成長していくんだなと感じました。
成長といえば、時砕きとしても成長していきましたよね。後見人のハルナの強さは、どれだけリンネのあこがれになっていることか。ぶっきらぼうに見えるけど、弟子のリンネが可愛いんだろうなあと思える様子が、時々見られて、なんか嬉しくなってしまう。
とまあ、楽しかったりいいことが目立ちましたが、もちろんそれだけではなく。久高のおじいちゃんが持ち帰ってきたリンネ父の行方不明の謎については、これからのリンネの行く末を大きく左右することになりそうですね。
逸脱者という存在には、意外な黒幕がいるようなので、時砕きたち、そして父を思うリンネたちとしても、楽ではないかもしれません。それでもきっと、最後には、鷹見さんの書いた絵のような未来が待っていると、そう信じています。あったかいものいっぱいで、じわりとくるラストでした。
時載りリンネ! 5 明日のスケッチ (角川スニーカー文庫)
清野 静
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